米トランプ政権による通商政策において、米国の鉄鋼輸入において中国などに大幅は関税が課せられる可能性がある。4月中旬までに発表される見通しのトランプ大統領の判断が注目される。大和総研経済調査部の主席研究員、金子実氏と、研究員の永井寛之氏、中田理惠氏は2月23日、「中国の鉄鋼の過剰制作能力と米国の通商政策」と題したレポート(全13ページ)を発表し、米国の通商政策が中国経済に与える影響について考察した。レポートの要旨は以下の通り。
 
◆鉄鋼の輸入が米国の安全保障に与える影響についての米国通商拡大法に基づく米商務省の調査結果が公表され、中国の生産能力の拡大を主たる要因とする世界の鉄鋼の過剰生産能力を背景として、米国の鉄鋼産業の稼働率を引き上げるための輸入制限が必要であるとされた。この調査結果を受けての輸入制限についての最終的な判断は、4月中旬までに、トランプ大統領によりなされる。
 
◆米国の鉄鋼の輸入額の輸入先国別の推移を見ると、リーマン・ショック以降の中国からの輸入額の回復が、他の輸入先国と比べて著しく遅くなっており、その結果、米国の鉄鋼輸入に占める中国からの輸入の直近のシェアは、小さくなっている。
 
◆この背景には、リーマン・ショック以降、米国のアンチダンピング関税・補助金相殺関税が中国からの鉄鋼の輸入に集中的に賦課されたことがあると見られる。しかし、その間にも中国が世界の鉄鋼の過剰生産能力の大きな要因であり続ける状況は解消されておらず、今後、米商務省の調査結果に基づいて鉄鋼の輸入制限措置がとられても、世界の鉄鋼の過剰生産能力の解消に資する効果は期待できない。
 
◆他方、米商務省の調査結果に基づく輸入制限は、中国以外の国も広く対象にする。その妥当性は、発動要件等についてのルールがないためにWTOには判断できない可能性が高く、広範な輸出国による対抗措置の長期化につながる可能性がある。
 
◆中国の鉄鋼輸出は、アジア新興国へのシフトが進んでいるが、その背景の一つには、中国の「一帯一路」構想の中での、大規模なタイドローン(紐付き借款)の供与がある。新興国のインフラ整備における調達環境の整備が求められており、そのためには世界各国間の国際的な連携の強化が必要である。しかし、米商務省の調査結果に基づき輸入制限が行われると、対抗措置の長期化がその障害となる可能性がある。
 
◆2018年11月の米国の中間選挙が近づく中で、関係者が通商政策の政治性を考慮して対応することにより、トランプ大統領の判断が副作用を最小限にするものとなることが期待される。(情報提供:大和総研)(イメージ写真提供:123RF)