金融業界にとって2017年は、激動の1年であった。株式市場は16連謄、バブル崩壊後の最高値更新を記録し、一部の不動産価格も80年台のバブル越えを記録した。ビットコインの高騰も話題になった1年だが、その一方で為替市場は比較的ボラティリティ(変動幅)の小さな相場となった。加えて、株式市場との連動性も薄れるなど、FXで運用するにはやや難しい1年になったともいえる。はたして、新年2018年の為替市場はどんな動きをするのか。外為オンライン・アナリストの佐藤正和さん(写真)に2018年1年間の相場の行方をうかがった。

 ――2018年はどんな1年になりそうでしょうか?

 まずは2018年最大のイベントとしては、米国の「中間選挙」が11月にあります。上院、下院とも与党である共和党がかろうじて過半数を上回っているものの、12月のアラバマ州の上院補欠選挙では25年ぶりに民主党所属の候補者が勝利するなど、トランプ政権の運営に大きく影響する結果となりました。2018年の米ドルの動向にも影響があると思います。

 さらに、2月には中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長が任期満了で退任し、パウエル新議長が誕生します。イエレン議長の政策を踏襲すると見られている新議長人事ですが、現在副議長の人事が空席になっており、また、すでに辞任が決まっている理事もおり、トランプ政権の考えを反映しやすい人事体制に変化する可能性が指摘されています。

 さらに、FRBが2018年の間に何回利上げをするのかにも注目が集まっています。米国の金利引上げはドル円相場にも大きな影響をもたらします。現時点では2回という意見が多数派になっていますが、今後の情勢次第でどうなるのかは予断を許しません。実際に、米国の景気は極めて良好です。

 ――米国の金利が引き上げられるとしたら、どのあたりがポイントになるのでしょうか?

 たとえば、12月22日(日本時間23日)に発表された商務省の11月の「新築一戸建て住宅販売件数(季節調整済み、年率換算)」では73万3000戸に達し、前月の改定値から17.5%増加、前年同月比では26.6%増となっています。年率換算では2007年7月以来、10年4か月ぶりの高水準となっており市場予想を大きく上回っています。

 さらに、12月初めに発表された11月の雇用統計でも、非農業部門の就業者数は22万8000人の増加となり、失業率も前月と同じ4.1%と低水準を保っており、夏のハリケーンの影響はすでに消えたと分析されています。

 残るは物価ですが、米国の景気の好調さは他の国と比較しても頭二つ分ぐらい抜きんでており、そこに上院、下院議会が「税制改革法案」を通過させました。歴史的減税とも報道されていますが、個人消費などが伸びて物価も上昇していくことになるのではないかと思います。個人消費が伸びれば、物価も徐々に上昇していくサイクルに入り、その度合いによってFRBの金利引き上げの回数が決まってくると思います。

 ――結局、日銀は17年には何もしませんでした。来年はどうでしょうか?

 2017年の日本の景気は、株式市場が上昇したり、企業業績が上向いたりするなど一部では順調だったのですが、相変わらず賃金が上がらず、物価もパッとしない、という状況が続いています。そんな中で、黒田日銀総裁がイールドカーブの調整など、欧米とは異なる金融政策を実施しているなかで、「リバーサル・レート(金利を引き下げすぎると、却って金融緩和の効果がリバース=反転してしまう可能性のこと」という言葉を講演で使い、注目されています。

 ある意味で出口戦略を示唆するものなのか、という議論もありましたが、12月22日の金融政策決定会合後の記者会見で、黒田総裁は「金融緩和の方針に変化はない」ことを強調しました。黒田総裁の任期も4月に迎えますが、現状では再任される可能性が濃厚です。

 いずれにしても、日銀は引き続きイールドカーブ調整、マイナス金利、国債買い入れ、ETF買入れといった量的、質的量的緩和を続けて行くことになると思われます。とはいえ、国債の買入れやETFの購入といった量的金融緩和政策では、限界が近いとも言われています。

 ―-ユーロ圏もブレグジットなど、イベントが続きますが2018年はどうなりますか?

 ECB(欧州中央銀行)は、現在の月額600億ユーロの規模で実施して来た国債などの買入れを、2018年1月から9月までの間、300億ユーロに減額するダウンサイジングを実施すると宣言しています。いよいよ量的緩和の終了かと思われたのですが、9月で量的緩和が終了するわけではなく、その規模も状況によっては増やす、という意向を示しており、市場はやや混乱している状態です。

 量的緩和の終了が一体いつになるのかが注目されるところですが、ドイツ連銀総裁などからも「いつ量的緩和が終了になるのか。はっきりさせるべきではないか」といった声も上がっています。とはいえ、ECBが12月14日に発表した2020年のインフレ見通しでは1.7%となり、目指すインフレ目標率2%を達成するには至っていません。そういう意味では、2018年はECBが依然として量的緩和を継続していく可能性が高まったと言えます。

 一方の英国ですが、2018年には具体的なブレグジットが始まりますが、国内でのインフレ率が高まっており、金利のさらなる引き上げによって英国ポンドは高値を追う可能性があるかもしれません。

 ――2018年の予想レンジを教えてください。

 米国の景気動向がどう動くかで、米国の長期金利が大きく動きます。為替市場というのは、企業業績などで動く株式市場などと違って、金利によって大きく動き、影響を受けます。そういう意味では、米国が2018年には2回、もしくは3回の金利引上げが予想されており、原則として「ドル高」の傾向が大きな基調になると考えられます。具体的には、次のような予想レンジを考えています。

●ドル円……1ドル=105円-120円
●ユーロ円……1ユーロ=125円-145円
●ユーロドル……1ユーロ=1.13ドル-1.23ドル
●ポンド円……1ポンド=140円-160円

 ――豪ドルのトレンドはどう見ればいいでしょうか?

 2018年のオーストラリア経済は、2017年が資源価格の回復や中国経済が堅調だったことから、順調に推移しており、中央銀行に当たるオーストラリア準備銀行(RBA)の利上げがいつになるのかがポイントだと思います。

 すでに住宅価格は上げ止まっており、春先になるのか、あるいはもっと先になるのかは、今後の豪経済次第と言えます。1年間の予想レンジとしては、1豪ドル=82円-92円と見ています。

 ――最後に、2018年のFX投資の注意点を教えてください。

 最近は、株式市場と為替市場が連動しないなど以前とは異なる傾向がみられます。この背景には「為替は金利で動くもの」という基本に基づいているものです。そういう意味では、米国の金利が上がればストレートにドル高となり、他の通貨も金利が上がればその通貨は高くなります。日本の金利は当面上がりそうもありませんが、かといって円安一辺倒にならないところがFX投資の難しいところでもあります。

 そういう意味では、2018年も為替市場の読みは難しい1年になるかもしれません。変動幅の大きな相場に注意しながら、余裕のあるポジションで投資を楽しむ余裕が欲しいところです。(文責:モーニングスター)。