中国経済の成長率が鈍化する中、金融システムの破たんによるハードランディング(急激な失速)が起きないかどうかが注目を集めている。大和総研経済調査部の主席研究員 金子実氏と、研究員の永井寛之氏、中田理惠氏は12月20日、「理財商品への規制強化と中国の金融システム」と題したレポート(全12ページ)を発表し、理財商品の規制が効果をあげてきている現状を踏まえ、今後の金融政策の行方について考察している。レポートの要旨は以下の通り。
 
◆中国の銀行の理財商品は、オフバランスのものでも銀行の暗黙の保証が期待されている可能性が考えられることから、銀行に債権に見合った自己資本を求めるマクロ・プルーデンス・アセスメント(MPA)における広義の債権に、オフバランスの理財商品を含める規制強化が、2017年から実施された。その結果、銀行預金の2割を超える水準まで増加していた銀行の理財商品残高は、2017年から減少に転じた。
 
◆このことが一要因となって、中国の金融市場全体における資金需給のひっ迫度が高まり、理財商品の利回りのみならず、国債やアリババの電子商取引の決済に利用できる余額宝の利回りが、2017年に入って上昇している。
 
◆このような中で、金融政策の中で設定される預金基準金利が据え置かれており、銀行預金金利の相対的有利性が低下していることから、銀行預金の増加率が縮小している。そして、中央銀行から銀行への貸出が高止まりしており、銀行の資金を補う形になっている。
 
◆金融市場における利回りが上昇しているにもかかわらず、中央銀行が、銀行への貸出により銀行の資金を補って、預金基準金利を据え置いているのは、銀行の利鞘の確保による銀行の自己資本の充実を通じて金融危機を防止することを優先しているためと考えられる。
 
◆その一方で、市場による金利決定というもう一つの政策目標は、後回しにされている。市場による金利決定が十分進んでいないことは、中国が国際的な資本取引を自由化しない理由の一つと考えられ、今後も金融危機の防止を優先して、市場による金利決定という政策目標を後回しにし続けるのかが注目される。(情報提供:大和総研)(イメージ写真提供:123RF)