今年も残すところあと1カ月弱、毎年為替市場は外国人投資家の多くが12月中旬あたりからクリスマス休暇に入るため、後半は閑散とした相場になりがちだ。そんな中で、今年は米国の利上げが確実視されているが、米国の利上げで世界の為替市場はどんな変化を見せるのか。外為オンライン・アナリストの佐藤正和さん(写真)に12月相場の動向をうかがった。

 ――12月の米利上げは、ほぼ確実と言われていますが、今後の見通しは?

 12月のイベントとしては8日に雇用統計があり、12日-13日(現地時間)にはFOMC(連邦公開市場委員会)があります。11月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比プラス21.0万人、失業率は4.1%と予想されていますが、いずれにしても大きなサプライズはないと予想されます。

 問題は、FOMCで利上げの発表があるかどうかですが、12月の利上げはほぼ確実だと思われます。イエレンFRB議長も、すでに利上げを織り込んだコメントになっており、いまや市場の関心は来年の利上げが何度あるのか、という予想に移りつつあります。

 ニューヨーク大学の講演でも「早すぎる利上げは、インフレ率を2%未満にとどめかねない。インフレ期待が下振れしている兆候が一部で現れている」と、今後の見通しについて言及。ややハト派的な姿勢と判断されて、ドルが一時的に売られました。

 ――実際のところ、来年の利上げの回数は?

 ただ、来年2月に退任するイエレン議長に代わって就任するパウエル新FRB議長も、イエレン議長の方向性を守っていくと見られており、「穏やかな利上げのアプローチを継続する」といった内容の発言を、上院銀行委員会の指名承認公聴会でしています。

 いまのところ、FOMCメンバーが予想する「ドットチャート」では、2018年の利上げ回数は3回と見ている人が最も多くなっているものの、ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーは、4回の利上げと予想しています。

 実際のところ、米国は非常に景気が良く、ブラックフライデーなどもネットを中心に好調な成績を上げています。株価も一時ハイテク株が売られたものの、ニューヨークダウ平均株価、ナスダックともに史上最高値を更新し続けている状況が続いています。12月の利上げ以後も、引き続き各種の統計を注意深く監視していくことが大切です。

 ――12月のドル円相場の予想レンジは?

 現在は、インフレ懸念のない株高、好景気という「ぬるま湯(ゴルディロックス)市場」とも言われますが、その一方でニューヨーク連銀が算出している消費者物価指数に「UIG指数」というのがあります。243の価格指数+企業景況感と労働・金融指数など、計346指数を基に算出したものですが、同指数が大きく上昇しているのも事実です。直近の指数では、対前年比で2.96%にも達しており、手放しでインフレの心配はないと断言もできない状況と言えます。

 そうした状況を考えると、12月のドル円相場は1ドル=110円-114円と見ています。仮に、この予想レンジのまま1年が終えるとなると、ドル円相場は9月に付けた107円台を高値として、底値が118円。年間で11円しか動いておらず、2015年以来の小さな変動幅になります。

 北朝鮮のミサイル実験など、様々なイベントが多かった割には小さなボラティリティに終始してしまったといえます。それだけ、この1年は利益を出すチャンスが少なかったわけで、FXにとっては難しい1年だったかもしれません。また、値動きの激しかったビットコインの影響もあったようです。

 ――ダウンサイジングが始まる欧州通貨ですが、12月の予想レンジは?

 いよいよ来年1月から9月まで、ECB(欧州中央銀行)による量的緩和の縮小、いわゆる「ダウンサイジング」が始まります。それまでに、景気が悪くなれば中止することも、縮小することもある、というドラギECB総裁の発言もあって、一時的にユーロは大きく売られてしまいましたが、11月は逆にユーロが買われました。

 一方、ドイツのメルケル政権が揺らいでいますが、相変わらずドイツ景気は良く、政治的リスクはさほど大きくないように思われます。11月2日に利上げを発表した英国も、インフレ率は3%近くまで上昇しており、加えてEU離脱に当たって支払わなければならない清算金について、大筋合意に達したという報道が出たことで、大きく英国ポンドが買われました。

 欧州通貨の予想レンジは、ユーロ円が1ユーロ=130円-136円、ユーロドルでは1ユーロ=1.15ドル-1.20ドルといったところでしょうか。英国ポンド円は、1ポンド=145円-153円。やや、ポンドのボラティリティが高いようです。

 ――豪ドルが大きく動きましたが、11月は?

 オーストラリア経済は、資源価格が比較的堅調で、中国経済も底堅いにもかかわらず、なかなか利上げの道は開けないようです。11月21日は、中央銀行である「オーストラリア準備銀行(RBA)」のロウ総裁が、近い将来に政策を変更する「強い根拠」はない、と述べ、長期据え置きの様相を示唆しました。

 政策金利のレートが過去最低の1.50%を続けていることに対しても、ロウ総裁は「いまが我慢のとき」といった発言で理解を求めています。豪ドルの12月の予想レートは1豪ドル=84円-87円というところでしょうか。

 ――最後に、12相場の注意点を教えてください。

 12月相場は、クリスマス休暇に入る外国人投資家が多く、ボラティリティは比較的大きくなるかもしれません。特にFOMCの前後は、米国の利上げが来年何回になるのかを示唆するような発言が出ないか、注目しておく必要があるでしょう。

 いずれにしても、FXは値動きの激しい取引。北朝鮮の地政学リスクやトランプ政権のロシア疑惑もあり、常に高い関心を持ってニュースはウォッチしていく必要があります。(文責:モーニングスター)。