シュローダー・インベストメント・マネージメント・リミテッドのチーフ・エコノミスト キース・ウエード氏(写真)は11月27日、東京・大手町で機関投資家向けに「2018年世界経済の展望」をテーマにセミナーを開催し、「2018年は経済成長が継続し、インフレ率が高まらないゴルディロックス相場(適温相場)となり、株式などのリスク資産にとっては良い環境が続く」との見通しを語った。株式では欧州(英国除く)、日本、エマージング諸国を強気とした。ウエード氏は、シュローダー・グループの見解を策定するエコノミスト・チームを統括し、同グループのアセット・アロケーション・コミッティにもマクロ経済の見通しを提供している。

 ウエード氏の見通しの背景は、米トランプ政権の発足や欧州で相次いだ国政選挙によって高まっていた政治リスクが後退し、「よりマクロ経済データが重視される環境になってきた」ことがある。

 マクロ経済指標では、米国、欧州、日本などの先進国経済の経済が堅調で、加えて、新興国の経済もしっかりしているため、「世界経済回復の恩恵が世界全体に広がっている。昨年は、このような全体的な広がりは見られなかった」という。

 さらに、世界のエコノミストによる世界経済のGDP成長率見通しは、「ここ数年間の傾向として時間の経過とともに、伸び率の予想が下方修正されていたが、今年は、時間の経過とともに上方修正されている。また、企業収益も上方修正されているので、株式市場にとっては追い風だ」と語っている。

 一方、インフレ率は低位で推移し、米国のコア・インフレ率は今年初め(1月)に前年比+2.3%だったものが、9月には+1.7%に低下している。このような経済成長が続いているにも関わらす、インフレ率が高まらない(金利上昇が抑えられる)状況を、「ゴルディロックス(適温)の状態」とし、「リスク資産への投資に追い風」と語った。

 ただし、個々の状況には変化が表れていると指摘。好調なアメリカ経済は、「家計が減速している一方で、企業の設備投資意欲が高まってきている。今後は、企業投資の盛り上がりが成長の原動力になるだろう」とした。家計が減速しているのは、賃金の伸び率が緩やかなためで、賃金については、「米国の労働参加率が金融危機後に大幅に低下して戻りきっていないことが要因。労働参加率の水準が低いため、完全雇用の状況でも賃金の上昇圧力が抑えられている。今後、経済成長によって労働参加率が一段と高まると、賃金にどのような変化が現れるかを注視したい」という。

 なお、コア・インフレ率は、「経済成長とタイムラグを置いて連動する傾向があり、今後は安定・上昇の可能性がある。FRBは12月に利上げを実施した後、来年はさらに3回の利上げを実施する見通しだ」と予想した。なお、来年実施される中間選挙は、トランプ大統領への低い支持率の影響を受け、共和党にとっては厳しい結果になるだろうが、「共和党が大幅に議席を失うことで、大統領を支えようという意識が強まり、減税法案などを議会が協力して成立させることにつながるだろう。減税によって米国の成長率は引き上げられる」と見立てた。

 その他の地域については、ユーロ圏の好調な経済と比較して、英国経済が弱いこと。日本の経済成長は継続し、日銀は長期金利をゼロ%近辺に固定しているイールドカーブコントロールを「18年には0.1%~0.2%程度に引き上げるオペレーションに転換するだろう」とした。そして、新興国は、「従来の米利上げ局面では新興国からの資金流出が起こっていたが、今回は、米国が量的緩和を縮小し始めたころから、通貨が30%程度値下がりするなど、新興国の調整は始まっている。これから米国が利上げを進めても、新興国経済は安定しているだろう」と見通した。2018年のリスク要因としては「金利上昇」をあげた。

 各アセットクラスの強弱感では、株式では、「欧州」「日本」「エマージング諸国」が「++」とマーケットを強くアウトパフォームすると予想。「米国」「英国」「アジア太平洋(日本を除く)」は「+」。総じて、株式には強気。

 債券は、「国債」「投資適格社債」が「-」、「ハイ・イールド」が「中立」。「物価連動債」「エマージング債券(現地通貨建て)」が「+」と、利回りが上昇する局面で、債券には慎重な姿勢。オルタナティブは、「コモディティ」と「金」が「中立」。「英国不動産」が「-」、「欧州不動産」は「+」とした。(情報提供:モーニングスター社)