FRB(米連邦準備制度理事会)議長に、これまで一貫してイエレン議長の政策に賛成票を投じて来たハト派のパウエルFRB理事が指名された。「好調な経済を支えている現在の金融政策を維持したい」というトランプ大統領の意向だが、史上最高値を更新し続ける米国株に代表されるように、やや過熱感を懸念する声も上がっている。加えて、トランプ政権に打撃を与えるロシア疑惑で逮捕者が出るなど、11月相場はボラティリティ(変動幅)の大きなマーケットになりそうだ。外為オンライン・アナリストの佐藤正和さん(写真)に11月相場の動向をうかがった。

 ――イベントが続く金融市場ですが、11月の見通しは?

 まずは、11月3日に発表された米国の雇用統計ですが、前回はハリケーンの影響で9月の非農業部門雇用者数は1万8000人増となりましたが、一転して10月は26万1000人の増となり、雇用情勢の好調さが再確認されました。失業率も4.1%と0.1ポイントの改善となり、米国経済の好調さを示しました。物価上昇を占う意味で重視される平均時給も、前年同月比2.4%増と堅調でした。

 10月31日-11月1日に行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、12月の利上げが示唆されており、これでFRBの12月利上げはほぼ確実視されたと言っていいでしょう。米国経済は、GDPも7-9月期は3.4%増となり、米国経済は絶好調と言ってもいい段階にあると思います。

 ただし、2016年の米大統領選中にトランプ陣営の外交顧問だったジョージ・パパドブロス氏が、ヒラリー・クリントン氏に不利な情報をロシア政府関係者から得ようとしていたとして訴追されるなど、トランプ政権のロシア疑惑が表面化。すぐに弾劾裁判といった事態にはならないにしても、一歩近づいたと言えるかもしれません。

 他にも、トランプ大統領のアジア歴訪など重要な外交イベントが続く11月相場は、場合によっては荒れる展開になる場合もありそうです。

 ――日本では自民党政権が総選挙で圧勝しました。11月のドル円相場の予想レンジは?

 自民党が総選挙で大勝したことで、アベノミクスは今後も維持されることが確認されました。また、黒田日銀総裁も「今後も量的緩和を継続する」と明言。総裁の発言を好感した株式市場は、11月1日は日経平均で400円を超える高騰となりました。10月は16日連騰という記録的な高騰相場を続けた日本株市場ですが、11月も引き続き高騰を暗示しているかもしれません。

 とは言え、沈黙を続ける北朝鮮問題も気になりますし、トランプ大統領の来日によって日米間の貿易不均衡が改めてクローズされる、といったリスクにも注目する必要があります。とりわけ、自動車や薬品といった業態では貿易不均衡がクローズアップされる恐れがあります。

 もっとも、最近の大きな特徴ですが、為替市場が株式市場と連動しなくなっている傾向があります。どんなに株式市場が高騰を続けても、1ドル=118円あたりまで行くと市場に警戒感が出てくるのは避けられません。

 11月のドル円の予想レンジとしては1ドル=112円-115円というところでしょうか。レンジ幅は小さいものの、値動きの激しい相場になるとみていいでしょう。

 ――英国は利上げ、ECBはダウンサイジング? 欧州通貨が大きく動いていますが・・・?

 11月2日、英国の中央銀行であるイングランド銀行は2007年以来、10年ぶりとなる金利引上げを発表しました。インフレ率は、イングランド銀行が目標に掲げていた2%を上回る3%に達しており、GDPも17年第三四半期(7-9月期)に0.4%拡大しており、これで政策金利は0.25%上がり0.5%になります。

 一方、ECB(英国中央銀行)のドラギ総裁は、10月26日の定例理事会で、政策金利の水準を据え置いたうえで、資産買い入れプログラムによる量的金融緩和を18年1月から9月まで、現在の月額600億ユーロを300億ユーロに“ダウンサイジング”すると発言しました。

 加えて、「必要であれば、それ以降も資産買い入れを継続し、金融情勢が悪化して、目標インフレ率(2%)に向けた勢いが困難になれば、資産買い入れの規模を拡大し、期間の再延長もあり得る」という発言をしました。この発言によって、ユーロは大きく売られました。いわゆる失望売りが出たわけです。

 ――カタルーニャの独立騒動もあり何かと不安定ですが、11月の予想レンジは?

 スペインからの独立を模索するカタルーニャの問題も騒がれていますが、EU全体から反対されて、米国や国連も含めて国際社会全体が反対している現状では、そう大きな問題にはならないんじゃないでしょうか。むしろ、英国とEUのブレグジット交渉の行方のほうが注目度は高いかもしれません。

 いずれにしても、11月、最大のポイントはこれら英国ポンド、ユーロの動きがどうなるのかを見極めることと言っていいかもしれません。そういう意味からすると11月の欧州関連通貨の予想レンジは、ユーロ円が1ユーロ=130円-135円、ユーロドルは1ユーロ=1.15ドル-1.20ドル。英国ポンド円は1ポンド=145円-151円というところです。

 ――10月は豪ドルが大きく動きましたが、11月は?

 10月19日に発表された豪雇用統計が市場予想を上回る好調な結果だったために、将来の利上げを意識されて、一時的に大きく買われました。加えて、ニュージーランドでは9年ぶりの政権交代もあり、オセアニア通貨が久しぶりに注目されることになりました。

 11月7日に開催されるRBA(オ―ストラリア受ビ銀行)で、政策金利の利上げを決定するかどうかですが、その可能性は微妙なところです。11月の予想レンジとしては。1豪ドル=85円-89円というところでしょうか。

 ――最後に、11相場の注意点を教えてください。

 イベント満載の11月相場ですが、やはりポイントになるのは欧州通貨と考えて良いのではないでしょうか。ユーロと英国ポンドの動きについては注目する必要があります。ボラティリティが大きくなる場合もあるので、常に注意深く相場をウォッチするべきでしょう。

 また、最近は連動しなくなってきたとはいえ、株式市場が世界的に上昇する傾向にあり、株式市場についても注視しておく必要があります。(文責:モーニングスター)。