FOMC(連邦公開市場委員会)の開催に加え、FRB(連邦準備制度理事会=米国の中央銀行に相当)の次期議長の指名、そして、雇用統計の発表と、11月の第1週は米国で重要イベントが相次ぐ。外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員、神田卓也氏(写真)は、「年末に向けてドルが115円を突破して一段高へ進むことができるかどうかの重要な転換点」として、重要イベントの発表内容に注目している。

 ――ドル/円が1ドル=115円を前に足踏みをしているようにみえるが、今後の見通しは?

 ドル/円は半年余り、1ドル=115円が壁になってきた。115円を抜けるかどうかが年末に向けてひとつの焦点となるだろう。

 過去5年を振り返ると、11月の月足はいずれも陽線(月初と比較して月末が高い)になっていて、ドル高の局面になることが多い。今年は、12月のFOMCで追加利上げが実施される見通しにあり、トランプ大統領の公約であった法人減税も実施される公算が高まっていることから、ドルの先高観が高まっていくだろう。年末に向けた1ドル=118円へのトライという、一段のドル高見通しはメインシナリオとして維持したい。

 ただ、トランプ政権の先行きは不透明であり、基調としてのドル高が維持できるかどうかは不確実なところがある。今週末まで相次ぐイベントの結果を一つひとつ確認しながら、スタンスを確かなものにしていきたい。

 まず、10月31日から11月1日までのFOMCで、12月の追加利上げを追認することになるだろう。会議後の声明で、その内容が確認できれば、ドル買いの安心材料になる。そして、同じ1日に、トランプ政権の税制法案が示される予定だ。今後は議会審議に移るが、すでに減税策を織り込んだ2018年度の予算案が可決・成立しているため、税制改革法案も可決のハードルが下がっている。無事に年内成立のメドが立てばドルを押し上げる力になるだろう。

 また、2日にはFRBの次期議長が発表される予定だ。市場では理事の一人であるジェローム・パウエル氏が議長に指名されるという見通しが強い。パウエル氏は、「緩やかな利上げ」を支持しているとされ、もう一人の候補であるジョン・テイラー氏が金利引き上げに前向きなことと比較すると、パウエル氏の議長指名はドル売りの材料とされている。ただ、パウエル氏も利上げそのものに否定的なわけではない。パウエル氏が議長に指名されてもドル安は長続きしないだろう。また、フィッシャー現副議長の辞任により空席となるFRB副議長のポストにテイラー氏が座る可能性も捨てきれない。この場合でもドルは買われることになるだろう。

 そして、3日に米雇用統計が発表される。9月の雇用統計はハリケーンの影響があって、非農業部門雇用者数が3.3万人のマイナスという結果になった。10月の予想は、9月の反動もあって30数万人増という予想になっている。ブレ幅が大きな数値ではあるが、9月と10月を均して10万人以上の増加という結果であれば、12月利上げを妨げるものではないと考えられる。

 当面は、これらの注目ポイントを消化する局面だ。雇用統計で12月利上げを後押しする数値が出てくれば、115円台乗せにトライすることもあるだろう。当面の予想レンジは1ドル=112円~116円とみている。

 昨年の11月は、トランプ大統領の誕生を材料にドル/円は10円ほど動いている。過去5年間の平均でも11月の値幅は5円くらいあった。今年も、材料によっては大きく動く可能性がある。ひとつひとつの材料をしっかり受け止めて投資態度を決めたい。

 ――ユーロ/ドルは1ユーロ=1.16ドル割れから出直ってきたが、今後の見通しは?

 ユーロ/ドルは9月の1ユーロ=1.2ドル台乗せで一旦は天井をつけたと考えられる。現在は、その調整の過程にある。

 ECB(欧州中央銀行)は1月以降に資産の買い入れ額を半減させるとしたが、同時に買い入れ継続期間を来年の9月まで継続することも発表している。買い入れ期間を9月まで続けるとした上で再延長の用意があると表明したということは、事実上来年の利上げを見送るということだ。「準オープン・エンド」ともいえる量的緩和であり、ユーロを買い上げるのは難しくなっている。シカゴのIMM通貨先物ポジションでユーロの買いポジションが相当数残っていることからも、ユーロに調整売りが出やすい局面だろう。

 年末に向けて例年ドルが買われる傾向にある事もユーロを押し下げる事になりそうだ。下値のメドは9月高値までの上げの38.2%押しに当たる1ユーロ=1.142ドル近辺だろう。

 ユーロに関係しては、英国のユーロ離脱やスペインのカタルーニャ地方の独立問題などのネガティブな材料が出ているが、Brexit(英国離脱)の結論が出るのは先の話であり、また、カタルーニャ地方の独立についてはカタルーニャ州の首相がベルギーに亡命を願い出たというニュースもあり、スペインの内政問題として収束しそうだ。これらの材料によって、ユーロが大きく揺すぶられるという懸念は大きくない。

 ユーロについては、下落するというより、上がりにくくなると見ている。ポジション調整のユーロ売りなどによって上値が抑えられるイメージだ。当面は、1ユーロ=1.14ドル~1.18ドル程度と予想する。

 ――その他、注目の通貨ペアは?

 11月の英ポンドの動きに注目している。2日に開催されるBOE(英国中央銀行)の会議で利上げが決定される見通しになっている。BOEは、Brexitによる経済の落ち込みと、ポンド安によるインフレ高進の板挟みで、難しい舵取りを迫られていたが、どうやらインフレ抑制の方を重く見ているようだ。

 2日の政策金利発表は、「インフレレポート」とカーニー総裁の会見もセットされた「スーパーサーズデイ」になる。発表のポイントは、インフレレポートにおいて、来年度のインフレ予測がどのように表現されるのかという点にある。8月のインフレレポートでは、18年のインフレ率は「じわりと下がり」、また、経済成長率も下がるとされていた。今回のレポートで、インフレの見通しが上方修正されるようであれば、イギリスの利上げは「サイクル」に入ってきたと目され、ポンド買いに勢いが付くと考えられる。

 反対に、インフレ率の見通しの表現が変わらないようであれば、足元のインフレ上昇を抑制するための単発の利上げとみられ、ポンドの上昇は限定的なものになるだろう。場合によっては、材料出尽くしのポンド売りを誘う事も考えられる。

 ポンドは価格が大きく動きやすい通貨だけに、11月の政策金利の変更に伴って、大きく動く可能性がある。当面は、ポンド/円では、1ポンド=145円~153円程度のレンジを予想している。