中国経済の規模は拡大しているが、そのGDPの拡大に対して経常収支黒字は増えず2%程度で横ばい、何等かの外的要因等によって赤字になる可能性もある水準だ。大和総研経済調査部の主席研究員の金子実氏、研究員の永井寛之氏と中田理惠氏は10月25日、「高まり続けている中国の国際収支リスク」と題したレポート(全15ページ)を発表し、「増加傾向に転じない経常収支黒字と減少傾向の続く対内直接投資の状況が続けば、いずれ対外直接投資に対する規制強化、本格的な緊縮的マクロ経済政策の発動など中国発の経済ショックにつながりかねない」と注意を促している。レポートの要旨は以下の通り。
 
◆リーマン・ショック以降、中国の経常収支黒字の対GDP比は、大幅に低下した後、ほぼ横ばいで推移している。その背景には、リーマン・ショック直後の中国の貿易相手国の景気減速のみならず、人民元の実質実効為替レートの上昇や、中国の全要素生産性(TFP)(GDPの増加のうち労働や資本の投入によらない部分、技術進歩等)の上昇率の鈍化があるとみられる。
 
◆リーマン・ショック後、中国政府は投資中心の内需拡大策をとり、資本蓄積が促進された。発展途上国の先進国へのキャッチ・アップの過程では、資本蓄積が進むことが一般的であるが、中国に先んじて先進国にキャッチ・アップしてきた他のアジアの国・地域(台湾、韓国、マレーシア、タイ)と中国の資本蓄積を、一人当たり実質GDPが同程度の期間について比較すると、中国でより急速に資本蓄積が進んでおり、中国の資本装備率は、他のアジアの国・地域と同程度にまで上昇している。中国の急速な資本蓄積の背景には、中国の高い貯蓄率があると考えられる。
 
◆資本装備率の上昇は、全要素生産性(TFP)の上昇率の鈍化とあいまって、資本の収益性を低下させているとみられる。このことは、中国への対内直接投資が減少傾向となる要因にもなっていると考えられる。
 
◆このまま対内直接投資の減少傾向が続くと、対外直接投資に対する規制の執行を強化しても、直接投資収支が流入超にならなくなる可能性がある。また、経常収支の対GDP比は、外的要因等によって赤字になる可能性がないとは言えない水準と考えられる。
 
◆経常収支と直接投資収支は、比較的安定した外貨準備高の増減要因であると考えられる。従って、両者が資金流出超になると、本格的な緊縮的マクロ経済政策をとらざるを得なくなったり、変動相場制に移行せざるを得なくなったりして、中国の経済社会が混乱する危険性が高まる。中国政府が、投資中心の経済成長促進策を修正する等により、そのような国際収支リスクを低下させられるか否かを注視する必要がある。(情報提供:大和総研)(写真は中国・北京の中央ビジネス地区の景観:123RF提供)