JETRO(日本貿易振興機構)によると、インドでは2017年7月から新しい税制が導入されました。GSTと名付けられたこの税制ですが、迷路のようだと言われていた今までの複雑な税制を簡潔化することが導入目的となったようです。インドでこれほどの大きな税制改革が起きたのは1990年代のインドの市場自由化以来のことで、金市場を含む各産業分野では今後の事業戦略などの再構築を迫られている状況です。
 
 今までは複数の国税と州税が併存し(物品税、付加価値税、サービス税、オクトロイなど)、なかには相殺不可能なものも多かったのですが、GSTはこのような間接税を一つに統合したものです。金を例にすると、今後のインドにおける金の税率は次のように計算されます。

 GST導入により金の税率は少し高くなります。ワールド・ゴールド・カウンシル(World Gold Council:WGC。以下単にWGC)の資料(※)によると今までの金の税率は12.2%(関税10%、物品税1%、付加価値税1.2%)でした。そのうちの物品税と付加価値税がGSTに統合されることになり、金のGSTは一律3%と決定されました。したがって、今後の金の税率は13%(関税10%、GST3%)となり、結果的に0.8%上昇する形となります。

・GST導入前:関税(10%)+物品税(1%)+付加価値税(1.2%)= 12.2%
・GST導入後:関税(10%)+ GST(3%)= 13%

 なお、GSTは、CGST(国税に相当。物品税など)、SGST(州税に相当。付加価値税)、IGST(複数の州を経由して取引される場合の税)から構成されます。

 このように税率が上がることによって、世界第2位の金消費国であるインドの金市場に悪影響がでるとの不安の声もあると思います。しかしWGCの資料によりますと、多くの業界関係者たちは今回のGST導入が、長期的には金産業のプラス要因になると考えているようです。その理由は次の2つからです。

1.供給の側面:GSTのような税制の改革は供給チェーンにおける透明化と効率化に寄与
2.需要の側面:税制改革による経済的な成長が予想されるため、消費者たちの金需要の伸びが期待できる

 今まで複雑に絡み合っていた税目によって、多くの供給業者は少しでも低い税率を適用させるため、不透明で非効率的な事業戦略を広げていたようです(州間移動の税を避けるため各地に倉庫構築など)。GSTにより透明な税率から効率的な戦略をたてることが期待されます。

 また、GST導入はインドの金需要にも長期的に影響を及ぼすでしょう。インドは昔から金が生活の中に根付いているということもあり、宝石はもちろん投資用の金地金や金コインへの需要も世界第2位の規模を誇っています。税制改革が長期的に経済成長につながるという予想からすれば、インド消費者の所得増加による金需要の拡大も期待できるかと思います。

※ GST's impact on India's gold market
http://www.gold.org/research/market-update/gst-impact-on-indias-gold-market

(イメージ写真提供:123RF)