人民元の対米ドルレートが2015年からの下落基調から約2年ぶりに上昇基調に転じている。大和総研の経済調査部 主席研究員の金子実氏と研究員の永井寛之氏、中田理惠氏は10月3日、「上昇に転じた中国人民元と資本取引規制」と題したレポート(全9ページ)を発表し、「最近始まった人民元レートの上昇は、長引く可能性がある」と見通している。レポートの要旨は以下の通り。

◆今年に入って、人民元レートが上昇に転じているが、中国政府が資本取引規制を使って対外直接投資を抑制したことが、その要因になっていると見られる。

◆中国における最近の経験を見ても、資本取引規制により円レートを安定化させようとしていた1970年代の日本における経験を見ても、資本取引規制が効果をあげて為替レートに影響を与えるまでには、一定の時間がかかっている。今後中国政府が資本取引規制についての政策を対外直接投資促進の方向に切り替えたとしても、それによってすぐに人民元レートが下落し始める可能性は、あまり高くないと考えられる。

◆オフショア人民元の増減は、中国国内の外貨の増減に寄与し、人民元レートの上昇・下落を後押しする。他方、オフショア人民元は、人民元レートの変動による為替差益の最大化が考慮されて増減していることが考えられる。従って、将来の人民元レートについての期待が、過去の人民元レートのトレンドにより形成されていると、オフショア人民元の増減は、人民元レートの上昇・下落の両局面において、一旦始まったトレンドを後押しする性質を持っていることになる。

◆オフショア人民元の一部である香港の人民元預金の増減と人民元レートの変動との間のこれまでの関係は、オフショア人民元がこのような性質を持っているという見方と整合的である。

◆今年に入って人民元レートが上昇に転じた後、香港の人民元預金もわずかながら増加に転じている。今後中国政府が資本取引規制についての政策を対外直接投資促進の方向に切り替えたとしても、それによってすぐに人民元レートが下落し始める可能性はあまり高くないことを考えると、米国の長期金利の急上昇などの状況変化がない限り、最近始まった人民元レートの上昇は、長引く可能性があると考えられる。(情報提供:大和総研)(イメージ写真提供:123RF)