国会が突然の冒頭解散で総選挙となり政局は大混乱だが、為替市場にはどんな影響をもたらすのか。北朝鮮や米FRB(連邦準備制度理事会)の動きも気になるところだが、混迷の中で為替市場がどう動くのか・・・。外為オンライン・アナリストの佐藤正和さん(写真)に10月相場の動向をうかがった。

――自民VS小池新党の対決構造が鮮明になって来ましたが、為替市場に与える影響は?

 安倍政権が安定的多数を確保すれば、アベノミクスが信任を得た形になりますから、さらに「円安」が進むことになると思います。問題は、政権がひっくり返るようなことになった場合ですが、小池新党がどんな政策を打ち出してくるのかがはっきりしていない段階での予測は難しいかもしれません。

 アベノミクスに対して小池新党がどんな政策を打ち出してくるかが注目されます。黒田日銀総裁の金融政策に対して、是か非かによって市場の反応も変わってくると思いますが、小池さんがもともと自民党だったことを考えると、大きな違いはないのではないかと思います。

 仮に、小池新党が勝利して政権がひっくり返るようなことがあったとしても、為替市場、株式市場ともに一過性の値動きで収束するかもしれません。せいぜい1円程度の変動で終わってしまう場合も考えられます。

――米国の減税法案や北朝鮮問題で、9月は大きくドル円が動きましたが・・・。

 9月は、北朝鮮のミサイル発射実験や核実験などの地政学リスク、そしてトランプ政権の様々な政策などが材料となって、ドル円で1ドル=6円も変動しました。北朝鮮リスクなどで1ドル=107円台まで円高が進み、その後連邦法人税減税などが好感されて、113円台までドル高が進行。久しぶりにボラティリティ(変動幅)の大きな市場になりました。

 法人税減税は、現在の35%から20%まで税率が引き下げられることになり、個人の所得税も12%、25%、35%の3つに簡素化されることになります。富裕層優遇という批判もありますが、これが実現すれば米国だけではなく世界的にも大きなインパクトを与える税制改革になると思います。

 加えて、10月からはFRBがバランスシートの縮小を始めることになっており、これまで買い入れていた米国債などを売却していくことになります。中央銀行のバランスシート縮小は、実質的に金利引上げ政策と同じですから、どの程度の影響が出て来るのか。また、減税のための財源確保をどうするのか。連邦債務の上限といった問題も残っており、これらの課題にも注目したいところです。

―-FRBによる金利引上げの可能性は? また、予想レンジは?

 結果的に、FRBの9月の金利引上げはなかったわけですが、次にあるとしたらFOMCのスケジュールなどから12月になります。イエレンFRB議長も9月26日の講演で、「物価上昇率がFRBの目標とする2%に戻るまで(現在の)政策を据え置くのは賢明ではない」といった金利引き上げ容認のタカ派的な発言をしています。10月から開始されるバランスシートの縮小と合わせて、当面米国の金利は上昇傾向が強まると考えていいでしょう。

 気になるのは北朝鮮情勢ですが、北朝鮮による先制攻撃でもない限り、実際の戦闘行為は両国とも避けたいはずです。一説には10月10日が危ないといった報道もあり、ミサイル実験などは今後も続く可能性はあると思います。ただ、いままでのように為替市場が大きく動く可能性は少ないのではないでしょうか。

 予想レートは、ドル円で1ドル=109円-114円。10月6日には雇用統計の発表がありますが、そう大きなインパクトはないと思います。

――このところのドル高でユーロも売られました。10月のドル円以外の予想レンジは?

 ドラギECB(欧州中央銀行)総裁は、9月の理事会で「超低金利政策を維持したまま、量的緩和政策の縮小(テーパリング)に着手する」という言い方をして「おそらく10月には決定する」と発言。10月26日に行われるECB理事会あたりから、動きはあるかもしれません。ただ、実際にスタートするのは年明け以降になるんじゃないでしょうか。

 欧州経済は、このところのドル高に助けられており、さらにドイツの総選挙でも極右勢力が伸びたものの、メルケル体制は引き続き継続されるため、今年の政治リスクは乗り切ったと考えていいと思います。

 9月6日にカナダが政策金利を0.25%引き上げ、英国もカーニーイングランド銀行総裁が「(金利上昇は近いものの)緩やかなペースにとどまる」と発言しています。日本を除いて先進国は、揃って金融緩和から政策転換の時代に移行しつつあると言って良いと思います。10月の予想レンジとしては、ユーロドルが1ユーロ=1.16ドル-1.21ドル。ユーロ円で1ユーロ=129円-135円、英国ポンド円は1ポンド=147円-153円というところでしょうか。

 豪ドルは、金利引上げの可能性もありますが、10月3日のRBA(オーストラリア準備銀行)の金融政策委員会で利上げを決める可能性は低いと思います。シドニーやメルボルンの不動産価格の上昇もやや鈍化しつつあり、利上げにはまだ間があるかもしれません。

 豪ドルの予想レンジとしては、1豪ドル=87円-91円というところでしょうか。オーストラリア経済が安定していても、10月は総選挙や北朝鮮情勢などで、久しぶりに日本の要因で為替が動くかもしれません。

――金融庁がレバレッジの引き下げを検討していると報道がありましたが、影響は?

 現在、FXのレバレッジは25倍ですが、金融庁が10倍に引き下げる検討に入ったと報道されました。やはり、10倍になると大きな影響が出て来ると思います。現在、ドル円を1万ドル建てると必要となる証拠金は4万5000円程度ですが、10倍になると11万3000円程度に跳ね上がります。

 ダイナミックな取引ができなること、そして市場参加者が減少するために流動性が少なくなり、ボラティリティの高い相場になってしまう可能性があります。

――最後に、10月相場の注意点を教えてください。

 国内では総選挙があり、さらにトランプ政権に刺激された北朝鮮の地政学リスクが高まっています。加えて、米国の法人税減税なども気になるところですが、いずれにしても米国次第というところでしょうか。

 そう考えると、10月も大きく揺れ動く変動幅の大きなマーケットになりそうです。これをチャンスにできるかどうかは、各投資家の力量次第ですが、決めつけた投資法はせずに、柔軟な決断をしていくべきだと思います。(文責:モーニングスター)。