セルシード <7776> (JQ)は、細胞シート再生医療製品の開発・事業化、および世界普及を目指すバイオベンチャーである。19年に食道がん再生治療の食道再生上皮シートの承認取得および販売開始を目指している。なお9月28日~30日開催の第76回日本癌学会学術総会付設展示会、10月11日~13日開催の再生医療Japan2017、10月27日~29日開催の第8回アジア細胞治療学会学術集会(ACTO)に出展する。株価はほぼ底値圏だろう。
 
■細胞シート再生医療製品の事業化、世界普及を目指すバイオベンチャー
 
 温度応答性ポリマーを用いた細胞シート工学という日本発の革新的再生医療技術を基盤技術として、この技術に基づいて作製される細胞シート再生医療製品の開発・事業化を目指すバイオベンチャーである。これまで治療が難しかった疾患や障害を治癒する治療法として、細胞シート再生医療の世界普及を目指している。
 
 なお日本では14年11月施行の「医薬品医療機器等法」および「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」によって、遺伝子治療を含む再生医療等製品に対する早期承認制度が導入されている。
 
 中期経営計画(17年~19年)では事業展開として、食道再生上皮シートの承認取得・販売開始、同種軟骨再生シートの開発加速、次期品目の開発着手、サプライチェーン体制の構築、再生医療支援製品の新製品開発・収益機会獲得、海外企業との事業提携推進を掲げている。
 
■細胞シート再生医療とは
 
 細胞シートは患者自身の組織から採取した細胞をシート状に培養したものである。細胞シート工学は、生体組織・臓器の基本単位となる細胞シートを生体外で人工的に作製する再生医療基盤技術で、東京女子医科大学先端生命医科学研究所の岡野光夫氏が世界で初めて創唱した。
 
 温度応答性ポリマーで表面加工した細胞培養皿を用いて、患者自身の組織から採取した細胞をシート状に培養する。温度応答性ポリマーは37℃付近以上で疎水性に、それ以下の温度で親水性となる特性があるため、37℃で培養し、培養後に温度を室温程度(20℃~25℃)に変えるだけで、細胞外マトリックスを保持したまま有機的に結合した細胞シートを培養皿から回収できる。
 
 細胞シート作製に必要な培養期間は、細胞の種類などによって異なるが概ね1~2週間程度で、細胞シートのサイズも自由に設定できる。複数の細胞シートを積層させて、細胞シート同士を接着させることもできる。
 
 培養した細胞シートを患部に貼る(移植する)だけで、細胞が生着(移植した細胞が患部に定着)し、細胞シートから分泌されたサイトカイン(細胞から放出されて細胞増殖や分化に影響する特定のたんぱく質の総称)が、患部の弱った細胞を活性化させると考えられている。
 
 また細胞シート再生医療には、患者自身の細胞を用いるため免疫拒絶反応が起こらない、身体のどの部位の細胞からも作製できる、施術としては比較的簡単な治療法である、細胞が生体組織に速やかに生着する、残存機能を損なわずに根治を目指すことも可能である、などのメリットがある。
 
 細胞シート再生医療は既に、さまざまな組織の再生に関する臨床研究が実施され、ヒト患者治療における基本的な安全性・有効性を示唆する科学的エビデンスが示されている。これまで治療が難しかった病気の症状改善、機能回復、治癒が期待され、新たな再生医療技術として注目されている。
 
■細胞シート再生医療事業および再生医療支援事業を展開
 
 事業区分は細胞シート再生医療事業および再生医療支援事業としている。細胞シート再生医療事業は、細胞シート再生医療製品および応用製品の研究開発・製造・販売を通じて細胞シート再生医療の普及を推進する。再生医療支援事業は、細胞シート再生医療の基盤ツールである温度応答性細胞培養器材および応用製品の研究開発・製造・販売を通じて再生医療の研究開発を支援する。
 
 なお子会社のCellSeed Sweden AB(スウェーデン)は、欧州で細胞シート再生医療製品の研究開発を行っている。
 
■食道再生上皮シートと軟骨再生シートの承認取得・事業化目指す
 
 細胞シート再生医療事業では、優先的に自社開発を推進するパイプラインとして、食道再生上皮シートおよび軟骨再生シートを設定し、当社における細胞シート再生医療第1号製品としての早期承認取得・事業化を目指して研究開発を推進している。
 
 なお事業化・収益化に向けた基本方針は、まず国内での細胞シート再生医療パイプラインの開発を自社主体で推進し、製造販売承認取得を目指すとしている。そして細胞シート再生医療の世界普及を推進するため、製造・販売のサプライチェーン体制を構築して事業化を前進させつつ、海外展開は他社との提携も視野に入れて細胞シート再生医療事業の拡大を目指す方針だ。
 
■食道再生上皮シートは19年承認取得目指す
 
 食道再生上皮シートは、食道がん再生治療法(食道創傷治癒・狭窄予防)として、東京女子医科大学先端生命医科学研究所が開発した治療法である。患者の口腔粘膜から採取した細胞を、温度応答性細胞培養皿を用いて細胞シートを作製し、食道がん切除内視鏡手術後の食道潰瘍面に移植する。
 
 東京女子医科大学と食道再生上皮細胞シート開発基本合意書を締結し、16年8月国立がん研究センター中央病院、国立がん研究センター東病院、東京女子医科大学病院において治験を開始した。そして17年2月には厚生労働省から再生医療等製品の先駆け審査指定制度の対象品目指定を受けた。
 
 今後の計画として、日本で17年は治験進行、18年に製造販売承認申請、19年に製造販売承認取得および販売開始を目指している。欧州では子会社のCellSeed Sweden AB(スウェーデン)が、16年に欧州医薬品庁(EMA)と事前相談し、治験準備中である。
 
 なお食道再生上皮シート移植用デバイスも同時開発している。細胞シートと組み合わせて治験を実施し、欧州での治験でも使用できるように医療機器としての承認を取得する方針だ。
 
■軟骨再生シートは17年第4四半期に治験開始予定
 
 軟骨再生シートは東海大学と、軟骨欠損および変形性膝関節症を適応症として共同研究を進めている。
 
 変形性膝関節症は、緩徐に進行する難治性の関節軟骨変性で、国内における患者数(40歳以上)は2530万人、そのうち有症病者は800万人と推定(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター調査)されている。高齢化により患者数の増加が予想され、国民健康寿命・介護費・医療費の観点から喫緊に対処すべき疾患である。
 
 細胞シートを積層化した3次元複合体の積層化軟骨細胞シートを患部に移植し、軟骨の修復・再生に寄与する。17年2月には東海大学整形学科の佐藤正人教授が、世界初の同種軟骨細胞シートの移植手術(多指症患者軟骨組織を採取し、同種細胞シートとして移植)を実施した。
 
 17年2月東海大学と、軟骨再生シート臨床研究の実用化開発、治験、製造販売承認申請に向けて協力体制を推進することを目的とした基本合意書を締結した。細胞シートの製造は当社で実施する。今後の計画は17年第4四半期(10月~12月)頃に治験開始、18年~19年は治験進行としている。
 
 なお「NHK World TV」で17年4月に紹介された東海大学「自己および同種細胞シートによる軟骨再生医療」の動画が、東海大学のWEBサイトにアップされている。
 
 17年6月には、日本医療研究開発機構(AMED)が公募した平成29年度「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業(再生医療等の産業化に向けた評価手法等の開発)」に、当社を代表機関として、東海大学およびDNAチップ研究所 <2397> を分担機関とする研究開発項目が採択を受けた。事業課題名は「同種軟骨細胞シートのための有効性品質評価手法の開発」である。
 
■海外は台湾で事業提携
 
 海外展開は台湾MetaTech社と、台湾における細胞シート再生医療事業(食道再生上皮シートおよび軟骨再生シート)の事業提携契約を締結(17年4月契約調印式)し、独占的開発・製造・販売権を付与した。開発進捗に応じてマイルストーン収入、開発製造関連データ料、開発サポート料を最大12億50百万円程度受領予定である。また上市(販売)時には売上高に応じたロイヤルティ収入を得る。

 9月19日には台湾MetaTech社から、最初のパッケージデータ「当社製造関連データ」を提供開始したことに伴い、契約の定めに従って60百万円を入金したと発表している。売上高の計上は本パッケージデータの提供完了時(別途40百万円を受領予定)の来期(18年12月期)の予定である。
 
■次期品目の開発に着手
 
 今後の戦略としては、パイプライン充実に向けて、食道再生上皮シートおよび軟骨再生シートに続く次期品目の開発に着手する方針だ。また細胞シート再生医療事業の海外展開につながる事業提携案件にも積極的に取り組む方針だ。
 
■再生医療支援事業ではテルモに特別仕様製品を供給
 
 再生医療支援事業は、主要顧客である大学・研究機関向けなどに、細胞シート回収用温度応答性細胞培養器材UpCellを中心とした器材を開発・販売している。
 
 14年4月大日本印刷 <7912> と細胞培養器材製造委託基本契約を締結し、市販製品(研究開発用途に限定)について大日本印刷に製造を委託している。また16年3月にはテルモ <4543> と細胞培養器材に関する取引基本契約を締結した。テルモが再生医療等製品に係る保険適用決定を受けた「ハートシート」に含まれる当社製品(温度応答性細胞培養器材)について、市販製品とは異なる特別仕様製品を供給する。
 
 今後の戦略としては、研究用器材の新製品開発や臨床応用用途の製品開発など顧客ニーズに対応した製品ラインナップ拡充、新規販売代理店開拓などによる国内外の販売網強化、さらに製造コストの引き下げなどを推進する方針だ。
 
■20年12月期以降の収益化期待
 
 今期(17年12月期)第2四半期累計(1~6月)の連結業績は、売上高が26百万円、営業利益が4億57百万円の赤字、経常利益が3億90百万円の赤字、純利益が3億90百万円の赤字だった。再生医療支援事業において売上計上が下期にずれ込んだが、細胞シート再生医療事業における細胞培養施設維持費の削減効果などで、赤字額が期初計画に対して縮小した。
 
 中期経営計画での損益目標数値は、17年12月期の売上高1億円、純利益12億30百万円の赤字、18年12月期の売上高2億50百万円、純利益9億30百万円の赤字、19年12月期の売上高3億50百万円、純利益8億80百万円の赤字としている。
 
 細胞シート再生医療第1号製品となる見込みの食道再生上皮シートは、17年治験進行、18年製造販売承認申請、19年製造販売承認取得を目指しているため、19年12月期までは赤字が継続する見込みだ。なお台湾MetaTech社との台湾事業提携による収入(最大12億50百万円程度)など、事業提携関連の売上は織り込んでいない。食道再生上皮シートの販売が本格化する見込みの20年12月期以降の収益化が期待される。
 
■株価はほぼ底値圏
 
 なお17年3月発行したEvolution Biotech Fundを割当先とする第16回新株予約権(行使価額修正条項付/コミット・イシュー、総数220万個=220万株)について、17年8月末時点で160万個(160万株)の行使が完了し、未行使新株予約権数は60万個(60万株)となった。
 
 株価は9月20日に上場来安値となる477円まで調整した。9月26日の終値は481円で、時価総額は約51億円である。週足チャートで見ると500円近辺の支持線を割り込んだ形だが、ほぼ底値圏だろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)