来年1月スタートの「つみたてNISA(ニーサ、少額投資非課税制度)」では対象商品の信託報酬に上限が設定されるなど、投資信託を使った資産形成への関心が高まるとともに、「運用コスト」への関心が高まっている。ただ、信託報酬は一般に「年0.5%」などとパーセントで表示されるため、実際に取られている金額を意識している人は少ない。カブドットコム証券が9月13日に公開した信託報酬実額シミュレーションは、投資信託の購入で生じる費用(信託報酬等)について「実額」をイメージできるツールだ。投資信託のコストは日々変動する価格に応じた比率で計算されるため、価格変動の推移によっても1年間の累積費用は異なる。この点について簡単にシミュレーションできるツールは、これまでにない新しいサービスになっている。同ツールは、ロボット投信の協力で開発された。
 
 たとえば、信託報酬率1.0%の「日本株式ファンド」に100万円投資していた場合、過去1年間の信託報酬額は税込1万925円で、運用益(信託報酬控除後)は19万8437円だった。この同じファンドで、過去2年間の信託報酬額は合計1万8629円(1年あたり9315円)と、過去1年間よりも少なくなっている。この2年間の運用損益は8038円の損失だった。過去5年間では、信託報酬額は8万2288円(1年あたり1万6458円)で運用益は105万188円と、当初投資金額は倍増している。同じ1.0%の信託報酬率でも投資信託の値動きによって、その実額は異なることが明確にわかる。
 
 あるいは、同じ期間で信託報酬率1.0%の「グローバル債券ファンド」に100万円を投資していた場合、過去1年間の信託報酬額は9903円、運用益は5737円だった。運用費用の負担が運用益を圧迫している様子がわかる。信託報酬率を0.5%にした場合は、信託報酬額は4952円で運用益は1万793円になる。
 
 このようなシミュレーションを「日本株式ファンド」「新興国株式ファンド」「グローバル債券ファンド」「新興国債券ファンド」の4つの仮想ファンドについて、それぞれ4段階の信託報酬率で検証できるようになっている。基準価額の推移は、実際の値動きに極めて近い数値を使っている。また、投資金額は10万円から1000万円まで7段階で比較できるので、実際に投資する金額に応じて負担する信託報酬額が実額で把握できる。簡単な操作でシミュレーション結果の違いがわかるので、投資信託の値動きの違いによる信託報酬額の変化について一通り確認するようにしたい。
 
 なお、現実には信託報酬の他に監査費用、有価証券売買手数料などの費用も負担しなければならない。信託財産留保額(売却によってかかる手数料)が必要な投資信託もある。投資信託の購入によって得られる損益は、信託報酬等を差し引いた後の損益になるので、費用が少ないほど、手にすることができる収益が増える。信託報酬率を購入前に必ず確認し、できるだけ費用のかからない投資信託を選ぶことがポイントになる。
 
 また、投資信託には一般に購入時手数料(販売手数料)が必要になる。購入時手数料が3%の場合、100万円を投資しても実際に投資信託の購入に充てられる資金は97万円になる。購入時手数料は資金の運用効率を悪くしていると厳しい目を向けられているため、最近では「ノーロード(購入時手数料ゼロ)」の投資信託の品揃えが充実してきた。投資信託の購入にあたっては、購入時手数料の有無と手数料率についても意識したい。
 
 投資信託は、少額で世界の市場に分散投資できる手段として大きなメリットがある商品だが、それを使って効果的に資産形成を行うには、投資するにあたって負担しなければならない費用についても、しっかり理解する必要がある。インデックスファンド(市場平均等に連動する運用成績をめざす投資信託)の場合、同じ指数に連動するものなら信託報酬が0.1%でも低い方が有利。一方、アクティブファンド(市場平均以上の運用成績をめざす投資信託)の場合は、過去の運用成績との比較で信託報酬率が納得できる水準かを判断したい。市場平均を年率5%上回る成績を継続的に残している投資信託であれば、インデックスファンドにプラス1%の信託報酬を支払うことに合理的と納得できるかもしれない。信託報酬についての理解が進むほどに、商品選択の自由度も高まる。
 
 このような投資信託の良し悪しを判断する材料は、簡単に使えて、直感的に理解できる方が良い。カブドットコム証券は、16年12月に信託報酬控除前トータルリターンの開示を始め、信託報酬控除後のリターン(一般に使われている基準価額を使ったリターン)と比較することで、監査報酬等を含めた投資信託の総費用がパフォーマンスに与える影響が分かるようにした。そして今回、信託報酬の実額をシミュレーションするツールを公開。さらに、9月末をメドにロボット投信と共同で投資信託の基準価額の変動要因分析をシミュレーションできるツールの提供も開始する予定だ。投資信託の理解を助けるため、様々な先進的な取り組みを進めている。
 
 ロボット投信は、「金融の“読む、書く、話す”を自動化する」ことをミッションに16年5月に創業。投資信託をはじめアセットマネジメント分野においてRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション=ロボットによる業務自動化)ソリューションを提供している。既に、コールセンター等の応答に使うIVR(電話自動往訪システム)やチャットボット、また、資産運用サポートで使うロボアドバイザーなどを実用化している。その技術力は三菱UFJフィナンシャル・グループ主催のMUFG DigitalアクセラレータでAWS賞を受賞するなど高く評価されている。また、今年7月には三井住友アセットマネジメントの社長・会長を歴任した前田良治氏を顧問に迎えるなど経営体制も強化している。(写真は、左からロボット投信 顧問の前田良治氏、同社長の野口哲氏、カブドットコム証券の松永亜弓氏)