中国経済は今年1-6月期の6.9%成長をピークに緩やかに減速していきそうだ――大和総研経済調査部の主席研究員、齋藤尚登氏は8月22日に発表したレポート「心配な住宅実需抑制と民間の景況悪化」(全10ページ)で、年後半の中国経済の鈍化を予測している。レポートの要旨は以下の通り。
 
◆2017年7月の主要経済統計は軒並み減速した。中国の統計は月毎のぶれが大きく、単月のデータで一喜一憂する必要はないのかもしれないが、(1)住宅「実需」の抑制、(2)民間部門の景況悪化、といった懸念材料が出てきていることには注意が必要であろう。中国経済は1月~6月の6.9%成長をピークに、緩やかに減速していく可能性が高い。
 
◆懸念材料の一つは住宅「実需」の抑制である。国家統計局はティア1都市、ティア2都市の投機・投資需要の減退を政策効果の発現として高く評価しているが、抑制されたのは投機・投資需要に限定されない。例えば、北京市では、居住目的と見做される、家計で1軒目の住宅ローン金利については、市場金利の上昇を受けて、今年6月から多くの銀行が貸出基準金利を上回る金利設定を行うようになっている。本来であればサポートされるべき居住目的の住宅購入を抑制しかねない状況であり、価格抑制策が効きすぎるリスクが懸念されよう。
 
◆もう一つの懸念材料は民間部門の景況悪化である。国家統計局の製造業PMI(50が拡大と縮小の分岐点)を企業規模別に見ると、2017年7月は大型企業が52.9と2ヵ月連続で上向いた一方で、中型企業は49.6、小型企業は48.9と、それぞれ7ヵ月ぶり、4ヵ月ぶりに50を下回った。金融引き締めやデレバレッジの悪影響は中小企業に色濃く表れているのである。
 
◆米トランプ大統領は、中国による米国企業の知的財産権の侵害が深刻だとして、通商法301条の適用を視野に米通商代表部(USTR)に対して調査開始を指示し、8月18日に調査が開始された。当然、これはリスク要因ではあるが、調査が終了するまでに相当な期間が必要との指摘があり、直ぐにどうこうという話ではない。むしろ気になるのは、5月中旬以降の元高の影響である。これまで中国の輸出増加をサポートしてきた元安局面は変化しつつあり、先行きには注意が必要となろう。(写真は広州の新しい住宅群、提供:(C)Guo Zhonghua/123RF)