中央人民政府駐香港特区連絡弁公室(中連弁)の張暁明・主任は8月9日、建国68周年記念活動準備委員会の設立大会に出席し、昨今の香港情勢に言及。立法会議員の資格喪失、旺角暴動に関する判決、高速鉄道をめぐる議論を挙げて情勢は好転したとの見方を示した。「香港独立」などを掲げる過激な勢力に対する中央の警戒が緩和されたともみられる。(編集部・江藤和輝)
 
 張主任は「新たな特区政府が順調な滑り出しを見せ、香港の形勢は上向いている」として中央が楽観的にみていることを示唆。7月14日に新たに4人の立法会議員が資格を喪失したことに触れ「『香港独立』分離勢力は大きな打撃を受け、基本法と全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会の解釈の権威が顕著に示された」と述べたほか、8月7日に旺角暴動の参加者3人に量刑が下されたことも「香港の法治が守られている」と評した。また広州—香港間高速鉄道の出入境審査を1カ所で行う「一地両検」案については「香港社会の主流の声は賛同している」との見方を示した。さらに過去5年の議論や闘争を経て1国2制度に対する人々の認識が高まったと指摘し、「香港の情勢はまさに返還以来の根本的意義を伴った好転を迎えている」と述べた。
 
 高等法院(高等裁判所)は7月14日、特区政府が昨年12月に起こした非親政府派議員4人の議員資格喪失を求める裁判で判決を下した。裁判官は劉小麗氏(無所属)、姚松炎氏(建築・測量・都市計画・緑地設計業界選出)、羅冠聡氏(香港衆志)、梁国雄氏(社会民主連線)の立法会での宣誓を無効と判断し、4人の議員資格喪失を宣言。裁判官は「4人の宣誓方式は明らかに誠心誠意に宣誓する意思がなく、宣誓の責任を履行する意思はないため、宣誓の原則に違反する」と説明した。
 
 青年新政の2人に続く今回の4人の資格喪失で非親政府派は直接選挙枠と職能別選挙枠ともに個別採決での否決権を失った。今後行われる補欠選挙で仮に議席をすべて親政府派が獲得した場合、非親政府派は3分の1を下回る23議席となり、政治体制改革などの重要議題で否決権を失う。
 
 4人が議員資格を喪失したことに際し非親政府派は(1)4人の訴訟費用支払いと議員報酬返納を免除(2)青年新政の2人と今回の4人の議席の補欠選挙を同時に実施しない――を行政と立法の関係改善の条件として林鄭月娥・行政長官に求めている。これに対し林鄭長官は7月18日の記者会見で、「亀裂修復のためといえども、法律・法治精神の面で妥協することはできない」と回答。補選を同時に行うと直接選挙枠のうち2議席を親政府派に奪われる可能性が高いが、林鄭長官は「人の困難につけ込むことはしない。法律の規定と状況を考慮して補選を行う」と述べたほか、青年新政の2人の上訴申請が許可待ちであることや今回の4人が上訴するかも未知数であるため、補選を同時に実施するかどうかは分からないと説明した。民主建港協進連盟(民建連)の李慧瓊・主席は公費・労力節約の面から同時に行うべきと提唱している。
 
 区域法院(地裁)は7月17日、昨年の春節(旧正月)に発生した旺角暴動の参加者として起訴された第3陣の被告に判決を下した。被告は楊子軒氏(18歳、運輸業)、羅浩彦氏(20歳、運輸業)、陳紹鈞氏(47歳、無職)、孫君和氏(27歳、旅行業)、連潤発氏(25歳、労働者)の5人。うち楊、羅、連の3氏は暴動罪が成立したが、陳、孫の2氏は証拠不十分で無罪となった。8月7日には有罪となった3人に量刑が下された。このうち楊氏は18歳であることから教導所に収監。羅氏と連氏は禁固3年となった。裁判官は「香港は狭いため、暴動が蔓延するスピードが速く、深刻な結果をもたらす」と述べた。旺角暴動ではこれまでに91人が逮捕され、うち57人が暴動参加、暴動煽動、放火、違法集結、警官襲撃、逮捕拒否、公務執行妨害などで起訴された。すでに判決が下された被告の中ではタクシーに放火した楊家倫氏(31歳、技術者)が最高の禁固4年9カ月となっている。
 
■53%が「一地両検」支持
 
 林鄭政権にとって最初の大きな試練ともいわれているのが高速鉄道の「一地両検」問題だが、これも世論の動向から政府の楽観姿勢がうかがえる。民主派議員などは8月2日、「一地両検」案の撤回を求める「一地両検関注組」を設立した。メンバーは非親政府派議員、識者、民間団体と大学学生会の代表など94人。梁国雄氏ら資格を喪失した議員も含まれている。特区政府に対し(1)大衆に「一地両検」案に関する間違った情報の発信を停止(2)「一地両検」案を撤回(3)多くの案を提示して公開諮問を行う――の3つを要求する「立場書」を発表し、今後3カ月の間に街頭での宣伝活動や数十万人の反対署名を集めるなどの世論戦を行うと表明した。
 
 これに対抗するかのように親政府派では香港経済民生連盟(経民連)青年事務委員会など20組織が7日、「一地両検関注連盟」を結成し、「一地両検」案への支持を表明。また経民連の梁美芬氏、民建連の周浩鼎氏ら弁護士などの背景を持つ親政府派議員5人と法曹界関係者20人余りも8日に「法律界関注一地両検連席」を結成した。
 
 『明報』は香港大学民意研究計画に委託し「一地両検」案に関する世論調査を行った。調査は2~3日、517人を対象に行われた。西九龍駅に中国本土側の税関・出入境管理所を設置することについて「支持」は52・7%、「反対」は33・9%、「半々」は6・2%、「分からない」は7・3%だった。「一地両検」案による1国2制度への影響については「信頼は変わらない」が48・2%、「信頼が低下」は34・8%、「信頼が増す」は11・4%、「分からない」は5・6%だった。
 
 また自由党も2~7日、1262人を対象に調査を行った。「一地両検」方式で本土の職員が香港域内で執法することについて「賛成」が61・7%、「反対」が33・4%、「意見なし」が4・9%。「一地両検」は1国2制度にマイナス影響を与えるかについては「与える」が43・0%、「与えない」が43・3%、「意見なし」が13・7%。さらにマイナス影響を与えると答えた人の中で、なおも「一地両検」を受け入れる人は35・1%を占めた。
 
 『晴報』とウェブ媒体の「経済通」が7月25日からネット上で行っている世論調査では8月8日夜までに3万2758人が投票。うち90%に当たる2万9482人が「一地両検」への支持を示した。だが当初は低調だった基本法23条に基づく立法への反対運動が後に大規模デモに発展したなどの例もあり、予断は許さないといえる。(イメージ写真提供:123RF)