米国の長期金利が2.25%を超えて上昇してきたことで、ドルの動きに力強さが増してきた。1ドル=113円台に乗せたドル/円について、外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員、神田卓也氏(写真)は「市場の関心が、政局から本来の経済に移ってきた。ドル/円は1ドル=114円台を目指す方向だ」と見通している。

――ドル/円は、1ドル=113円台をうかがうほどに上昇する場面もあった。今後の展望は?

 米国が6月13日-14日のFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げを決定後、米国の長期金利が上昇し、ドル高気運が強まっている。また、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁の発言によってユーロの緩和縮小観測が高まったことなどをきっかけに、ユーロが一段と買われ、円が軟化することにつながった。これまでは、トランプ政権への不安や、欧州の選挙など政局が焦点だったが、ここへきて金利など本来の経済に焦点が戻ってきたようだ。

 ドル/円は、5月10日に114.3円の高値があり、その後に109円割れの安値をつけて戻ってきた。114円台の時の長期金利は2.4%前後だった。当面は、為替も金利も、この当時の水準をめざし、1ドル=114円、長期金利2.4%の攻防に移っていくとみている。

 今年12月までの市場のFF金利の織り込み度をみると、後一回の利上げがあるとみる向きが50%前後になっている。利上げがあるともないともいえず、どっちもあるという姿勢だ。FRBは、経済データ次第と言っているので、当面は経済データに一喜一憂する展開になるだろう。3日のISM製造業景況指数、7日の雇用統計など米国の主要な経済指標の発表を注意深く見ていきたい。

 一部には、急速な円安について「円キャリー取引の復活」などという向きもあるが、ドルと円の金利差は1~2%程度でしかなく、円キャリー取引のメリットは薄い。キャリートレードを材料視した円安は長くは続かないだろう。これからは、米国景気の力強さに裏付けられたドル高機運が高まってくるかどうかにかかってくる。

 テクニカル的には、日足が、200日線を上抜いてきた、一目均衡表の雲の上に出てきたなど、ドル上昇を示唆する動きになっている。1ドル=108円台を二回つけるダブルボトムの形をしているので、ネックラインになっている114.3円が当面の目標になろう。114.3円を抜けて一段高に進めるかどうかを見極めるところだ。

 当面の予想レンジは、1ドル=110.5円~115.5円とみている。

――豪ドル/円は、一時1豪ドル=86円を超えるほどに上昇したが、今後の見通しは?

 豪ドル/円は、豪ドル=高金利通貨のイメージが強いため、円キャリー取引の復活などという話題に、もっとも反応しやすい通貨ペアといえる。世界の中央銀行が緩和解除から引き締めへの動きをして、金利差が意識され始めると豪ドルが人気になりがちだ。

 しかし、豪中銀は、以前はいち早く利上げに動くタカ派だったが、今回は腰が重い。英中銀、カナダ中銀の方がよほど利上げに前向きだ。この中央銀行の姿勢の変化は意識したい。

 豪中銀の姿勢には、資源ブームが終焉したことによる豪経済の鈍化と中国経済への不安が背景にあるのだろう。4日の豪政策金利発表、20日の雇用統計など豪経済指標に注目したい。

 世界的な景気が拡大していることは、豪ドルにはプラスの影響になるが、それが直接利上げ期待につながらないことから、今年2月の高値である1豪ドル=88円を抜けて上値に進むのは難しいだろう。ただ、世界経済が底堅いことから、たとえ雇用統計等の数値が思わしくなくても1豪ドル=84円を割って大きく下げることは考えにくいと思っている。

――その他、注目している通貨ペアは?

 ユーロが大きく値上がりしているが、行き過ぎではないかとみている。すでにドルインデックスは米大統領誕生前の水準にまで下がってしまい、ユーロ/ドルは1ユーロ=1.14ドル台に一気に乗せた。

 ECBのドラギ総裁が、金融緩和政策を微調整するような発言を行って、欧州の金利が上昇し、ユーロが急上昇することになった。ECBがこれまでのスタンスを変更するかのような発言に、市場が敏感に反応した格好だ。

 しかし、実態はどうかと冷静に考えると、緩和解除をこれから検討する段階にあるユーロ圏と、引き締めを始めている米国では、明らかに米ドルが強い。ユーロ高は長続きしないだろう。

 ユーロ/ドルの一昨年の高値が1.17ドル、昨年は1.16だった。今年は1ユーロ=1.15ドルを越えると天井感が出てくるのではないかとみている。