香港市民支援愛国民主運動連合会(支連会)は6月4日、天安門事件による犠牲者を追悼する6・4キャンドル集会をビクトリア公園で行った。28周年を迎えた今年の参加者数は主催者発表で11万人、警察の推計ではピーク時に1万8000人。ともに2009年以降で最低となった。独立志向の若者らが愛国を唱える支連会に反発して参加者減少につながったとみられるが、一方で「香港独立」に対する世論の支持も低下している。(編集部・江藤和輝)(写真は「6・4活動」の参加者数の推移。香港ポストのまとめ)
 
 6・4集会では昨年、香港専上学生連会(学連)が支連会を脱退したため、多くの大学・専門学校の学生会が動員を拒否したことが参加者数に影響した。支連会が綱領に掲げる「民主中国の建設」に若者らが疑問を抱いているため、従来プログラムに盛り込まれていた「中国夢」の合唱が学生バンドによる「自由之歌」の演奏に代わり、若者らによる対談も加わるなど、若者の取り込みに努めた。
 
 一方、香港大学学生会は昨年に続きフォーラムを開催し約400人が参加。だが昨年フォーラムを開催した香港中文大学学生会は3日、「6・4の追悼はすでに尽き果てた。追悼を続けるべきではない」との声明を出し、今年は何ら6・4関連活動は行わず、他の活動にも参加しないと表明していた。
 
 集会に先駆けた5月28日、支連会は天安門事件追悼デモを行った。参加者数は主催者発表で1000人。昨年の1500人から減少し、やはり過去9年で最低、歴代では08年の990人に次いで2番目に少ない。警察の推計ではピーク時に450人で、昨年の780人から減少、08年の500人を下回るなど、若者離れが著しい。
 
 梁振英・行政長官は6月6日の記者会見でこうした状況に触れ、「中国人としての身分を認めないため追悼しないという学生は、深く考えさえすれば香港は中国の一部であることが分かる。彼らがどう思っていようとも国際社会は彼らを中国人とみなす」とコメントし、追悼活動を奨励するような態度を見せた。本土派(排他主義勢力)の生みの親である黄毓民氏はある学生フォーラムで「中央は安定維持のため6・4集会がずっと続くことを望んでいる」とも述べている。
 
 事件に対する世論の見方にも変化がうかがえる。香港大学民意研究計画は2日、天安門事件に関する世論調査(5月22~25日、対象1003人)の結果を発表した。天安門事件の再評価については「支持する」が55%で前年比4ポイント低下、「支持しない」は同7ポイント上昇の27%で06年以降で最高となった。当時の北京の学生のやり方に対しては「正しい」が同1ポイント低下の46%、「間違っている」が同5ポイント上昇の22%で1993年の調査開始以降で最高に達した。中国の民主化推進に対し香港人は「責任がある」との答えは同4ポイント低下の58%、「責任はない」は同3ポイント上昇の30%だった。また支連会は「解散すべき」が同4ポイント上昇の25%、「解散すべきでない」が同5ポイント低下の46%となっている。
 
■過激な勢力は退潮
 
 昨今物議を醸している2047年以降の香港の前途についての世論にも変化が表れている。香港中文大学伝播与民意調査中心は7日、香港政治の発展に関する世論調査(5月23日~6月2日、対象1028人)の結果を発表。香港の「独立を支持」が11・4%で、昨年7月の調査での17・4%から大幅に低下。「独立に反対」は60・2%で、昨年の57・6%から上昇した。特に15~24歳で「独立を支持」の割合が最も縮小しており、昨年の39・2%から今年は14・8%に低下。「独立に反対」は26%から43%に上昇した。一方、「1国2制度の維持を支持」は全体で71・2%に達し、「全面的に中央の直接統治を支持」は14・7%だった。
 
 また中央政府の香港での1国2制度実現に対する満足度は10点満点で5・17点となり、14年の調査開始以降で最高。中央政府、特区政府に対する信任度も最高となった。中文大の李立峯・教授は若者の「独立」支持が大幅に低下したのは予想外と述べたものの、「過去1年に市民の間で本土派や香港独立に対する討論が増え若者に反省を促した。さらに現在、本土派関係者はマイナスイメージであるため独立支持が低下した」と分析している。
 
 民主党は11日、返還20周年フォーラムを開催し「香港と中国の関係に対する民主党の回顧と展望」と題する決議文を発表した。決議文では「民主党は香港独立を支持せず、現在の主権の枠組みの下で最大レベルの『自決』を実践すべき」「いわゆる『主権自決』は極めて大きなリスクの政治賭博」と表明。「主権自決」を推進すれば中央が自治権を回収し「1国1制度」を実施することは免れないと指摘し、香港の立憲主義、政治体制、前途にかかわる問題は必然的に中央と相互関係にあることを民主党は理解していると述べている。
 
 また決議文には基本法修正案として、第5条について「1国2制度の期限を50年以上に引き延ばす」、第45条について「行政長官選出方法をふるい落としのない普通選挙による選出に修正する」などを盛り込み、中央政府と新しい特区政府に提出するという。香港工会連合会(工連会)の黄国健・議員は「民主党が香港独立と1国1制度を支持しない立場は中央と一致する」と評価した。
 
 主流民主派が穏健に傾いて来たことは5月4日に行われた立法会議員の初の超党派食事会からもうかがえる。出席したのは親政府派が自由党、民主建港協進連盟(民建連)、香港経済民生連盟(経民連)、新民党、工連会、民主派が公民党、民主党、専業議政の各代表10人。社会民主連線(社民連)、人民力量、香港衆志、熱血公民といった過激な民主派、自決派、本土派の議員は誰も出席しなかった。社民連の梁国雄氏が呼び掛けた4月のデモも主流民主派による動員が得られず300人しか集まらなかったなど、過激な勢力の退潮が顕著となっている。