SBI証券は、5月にiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の運営管理機関手数料の完全無料化に踏み切るとともに、iDeCo専用ロボ・アドバイザー「SBI-iDeCoロボ」の導入、コールセンターの土曜日稼働など、相次いでiDeCoのサービスを拡充した。今年1月に加入対象者が公務員や専業主婦にまで拡大し、各社が手数料水準や商品ラインアップを見直した新プランの受け付けを開始したが、その1~3月で最も多くの加入者を集めた同社が、改めてサービス内容のブラッシュアップに踏み切った理由など、SBI証券投資信託部長の瀬畑史郎氏(写真)に聞いた。
 
――5月からiDeCoの運営管理機関手数料を完全無料化した理由は?
 
 昨年9月から、期間を区切ったキャンペーンとして運営管理機関手数料を無料にする取り組みを行ってきた。キャンペーンによって、手数料が無料であることに魅力は感じていただいているものの、コールセンターへのお問い合わせ内容などから、通常の料金体系である「残高50万円以上で無料」という条件が、高いハードルに感じられていることがわかってきた。
 
 お問い合わせをいただくお客さまからは、iDeCoで毎月1万円を積み立てたとして、50万円の残高に到達するまでに、何カ月必要で、その間に手数料を累計でいくら支払う必要があるのかを計算される方もあった。また、期間延長して6月末までとした無料キャンペーンが、いつまで続くのかというお問い合わせも少なくなかった。それほど、iDeCoの手数料の水準については、お客様の間で負担感が大きいと感じられていることが明らかだった。
 
 より幅広くご利用いただきたいと考え、50万円以上という残高の条件を廃止し、どなたにも運営管理機関手数料を無料でご利用いただくことにした。
 
 iDeCo口座を申し込みされた方のうち、多くの方が、SBI証券の総合口座を同時に開設していただいている。iDeCoが証券口座の入口にもなっているので、より多くの方々にiDeCoをきっかけに、資産運用を始めていただきたいという思いがある。
 
――iDeCo専用のロボ・アドバイザー「SBI-iDeCoロボ」導入の狙いは?
 
 iDeCoに加入される方の多くが投資未経験の方であることから、まずは投資に踏み出すきっかけになる取り組みが必要だと考えた。当社の運用商品ラインアップは幅広いため、投資経験のない方が、ひとつひとつの商品を吟味して、ご自身に合った商品を選んでいただくことは難しい部分もある。それをサポートしたいという思いがある。
 
 iDeCoロボは、年代、投資経験、損益のイメージなど、簡単な質問にお答えいただくことによって、その方の運用イメージに叶った商品を、モーニングスターの最新の評価データに基づいて3つ程度に絞り込んで紹介している。3つ程度に絞り込むことで商品を調べる手間が少なくなる。より詳しく商品を調べる際には、ワンクリックで当社ホームページの投信銘柄詳細画面に遷移するので、簡単に過去の運用成績や運用コストなどを同じ種類の他の商品と比較して検討していただくことができる。
 
 また、このロボの特徴は、特定の商品を推奨することがないことだ。いくつかの質問にお答えいただくことで、「オススメの投資スタイル」を6つのタイプ(元本確保派・堅実派・やや堅実派・標準派・やや積極派・積極派)に分けて紹介しているが、ロボの診断結果が「標準派」となっても、「やや堅実派」や「やや積極派」など他のタイプを自由に選んで、対象商品を確認できるようになっている。また、投資商品のカテゴリーも「おまかせ」、「国内株式」、「国際株式」、「国際REIT」などから自由に選べる。最初は「おまかせ」で出てくる銘柄を確認し、次に「国内株式」で見てみるなど、条件を変えながら、選定される商品のリストを比べていただきたいと思う。
 
――SBI証券は、今年1~3月の新規加入者数が約3万1,500件と、同期間の新規加入者総数約12.3万人の25%以上のシェアを獲得した。SBI証券が支持されている理由は?
 
 1~3月に加入していただいた方は、年代別では30代と40代の方が多く、その中心は40代の方々だ。この方々は、PCリテラシーも高く、ご自身でネットで調べて、どこが一番有利なのかということを判断できる方々だと思う。現役で働いている方が多いので、日中に銀行や証券会社の店舗を訪ねて相談したり、口座開設の手続きをすることは難しい。ネットで手数料の水準や品揃えなどを確認し、その情報で比較検討されていると考えるのが自然だろう。そのうえで、当社のサービス内容が良いと感じてくださったのだと理解している。
 
 その点では、これまでにご加入いただいた方々は、情報に敏感で、金融リテラシーも高い方々だと思う。反対に考えれば、まだ加入されていない方、これから検討なさる方は、サービス内容を開示してただ待っているだけではご加入いただけないということが想定される。より積極的に働きかけることが重要で、様々な機会を通じてアピールしていかなければならないと考えている。
 
――より一層の普及のために取り組むことは?
 
 資産形成の啓もうを行う「iDeCo online」という情報サイトを5月23日にオープンした。iDeCoの制度内容、iDeCoの始め方、運用の仕方などを、分かりやすく解説する記事を発信している。これまでのネット金融機関は、株式の売買、住宅ローンなどの銀行取引、あるいは、保険の加入など、すでに取引ニーズのあるサービスを、より低れんな手数料、または、より使いやすいツールを提供することなどで、利用を促してきた。「iDeCo online」で展開しているような潜在ニーズに働きかけ、啓もう活動に正面から取り組むのは、初めてのことだ。
 
 iDeCoは、現役世代の誰もが使うことができる制度だが、「なぜ若いうちからiDeCoを始める方が良いのか?」ということに興味をもっていただくことは難しい。誰でも60歳を迎える頃になると、「年金」は強く意識するテーマになるが、20代、30代では「まだまだ遠い話」にすぎない。後回しになるのは、当たり前のことだ。しかし、20代、30代が関心を持つ「キャリア形成」や「恋愛・結婚」などと同等の重みが「年金」にはある。
 
 30年先、40年先に利用する年金だが、その年金を自分で作っていくためには、早く始めた方が良い。なぜ、年金を自分で作っていく必要があるのか? なぜ、年金が若い今こそ考えることが必要な「自分ごと」なのか? このようなことを意識していただくには、年金制度や年金サービスの内容だけを発信していては届かない。これまでやってこなかったようなアプローチが必要になると思う。「iDeCo online」は女性向けメディアの形で、年金について考えるきっかけを提供したいというチャレンジだ。
 
 また、ネットの情報だけでなく、対面で相談したり、セミナーに参加してみたいというニーズも多い。SBIマネープラザが各地でiDeCoセミナーを随時開催しているので、ネットの情報だけでは不安な方は是非セミナーに足を運んでいただきたい。コールセンターでiDeCoの相談に土曜日にも対応するようにした。朝8時から夕方6時まで、新規加入についての疑問に答えている。自分で調べることに時間的な余裕がない方、また、自分で調べても納得のいく答えが見つからない場合など、ぜひ、お問い合わせいただきたい。
 
 一方、iDeCoの手続きの煩雑さが、途中で手続きを放棄してしまうことにもつながっている。あるいは、掛金の限度額が小さいなど、現在の制度そのものに改善の余地があり、制度改善の取り組みは続くだろう。iDeCoそのものも、これから徐々に使いやすい制度へと進化していく。当社も、息の長い取り組みとして、iDeCoをより多くの方に、より便利にご利用いただけるよう、サービス改善や啓もう活動を継続していきたい。(情報提供:モーニングスター)