景気対策が一巡する中国経済の成長率は、2018年以降に厳しさが増す――。大和総研経済調査部主席研究員の齋藤尚登氏は5月24日、「中国経済の2018年問題」と題したレポート(全9ページ)を発表し、足元で強くなっている中国経済が来年以降は失速する可能性があることに注意喚起した。レポートの要旨は以下の通り。

◆米国政府と中国政府は5月11日に、貿易不均衡是正に向けた「100日計画」の具体策を発表した。これらの政策が実行に移されても2016年に中国側統計で2,500億米ドルに達する中国の対米貿易黒字を大きく減らすことは期待できない。北朝鮮問題に対する中国の貢献を強く期待する米国と、5月14日、15日の「一帯一路」(海と陸のシルクロード経済圏構想)国際会議の箔を付けるために米国からの代表派遣を切望する中国が、合意しやすい項目を選んで成果を強調したというのが現実的な評価であろう。それでも、米トランプ大統領就任で懸念された米中通商関係の悪化が回避されていることは、米中貿易にとって良い話である。

◆中国の実質GDP成長率は2016年1月~3月以降、3四半期連続で前年同期比6.7%(以下、断りのない限り前年比、前年同期比、もしくは前年同月比)であったが、10月~12月は6.8%、2017年1月~3月は6.9%と成長が加速した。大和総研は想定以上に強い足元の成長率を受けて、2017年の成長率予想を従来の6.4%から6.6%へ上方修正した。ただし、今後は内需の勢いが鈍化していくことを背景に、この1月~3月を当面のピークとして、成長率は緩やかに減速していくと見ている。

◆2016年以降の景気を支えた乗用車、住宅、インフラの3本柱のうち、乗用車販売は既に息切れし、不動産開発投資も年後半には減速する可能性が高い。さらに、2018年は住宅価格の下落が中国経済の下振れリスクを高める懸念がある。前回の住宅価格下落局面、即ち土地使用権売却収入が減少する局面では、地方政府債務の地方債への置き換えという政策対応が奏功し、インフラ投資の高い伸び率を維持することができた。しかし、地方債への置き換えが一巡する2018年以降は、少なくとも同じ手法は使えない。

◆2017年秋に5年に一度の党大会の開催を控えて、中国政府は経済の安定成長を最優先し、実質GDP成長率が加速する局面が出現した。ただし、それを支えた政策対応は息切れしつつあり、特に2018年の中国経済には不透明感が漂い始めている。財政のさらなる拡大などの政策対応がなければ、景気下振れリスクが増大することになろう。(情報提供:大和総研)(イメージ写真提供:123RF)