確定拠出年金(DC)のあり方を議論している社会保障審議会の「確定拠出年金の運用に関わる専門員会」で、「指定運用方法」の基準が議論されています。現在は、制度に加入しているにも関わらず運用の指図をしない場合に便宜上設けられている「デフォルト商品(あらかじめ定められた運用方法)」が、法律で位置付けられる公式な存在になったため、その基準を明確にしようというものです。「指定運用方法」は、企業型DCの「規約」で定めるとされているため、基本的に企業型DCの話ですが、「指定運用方法は、DCプランとしてスタンダードな運用方法を定める商品ともいえる」だけに、iDeCoの運用を考える上でも気になるところです。

 そもそも確定拠出年金制度は、「加入者が自己の責任において運用の指図を行い、その運用結果に基づいた給付を受ける制度」(確定拠出年金法第1条)であるため、「デフォルト商品」という概念は不要でした。しかし、企業型では加入者による運用の指図が行われない場合(加入時に運用指図をせず、その後も一切運用の指図をしない)が現実に存在します。したがって、現在は法令解釈通知によって「あらかじめ定められた運用方法を企業型年金規約において設定することができる」として事実上のデフォルト商品を規定していました。

■指定運用方法による損失も加入者の責任

 今回は法律によって、「加入者が一定期間運用の指図を行わないような例外的な場合のために」、「指定運用方法」を規定することになりました。「例外的な場合」とあるとおり、基本は自分の責任で運用の指図をすることがDC制度なのです。したがって、指定運用方法に指定された後も、事業主や運営管理機関は、自らの意思で運用指図をするように加入者に対して、継続的に働きかけることが必要とされています。

 また、指定運用方法が適用される条件として、加入者が運用の指図を行わない一定期間(3カ月間以上)を設け、その期間を経過すると指定運用方法が適用されることが加入者に通知されます。さらに、通知後に2週間以上経過してもなお運用の指図が行われない場合に、指定運用方法が適用されることになります。

 重要なポイントは、「いったん指定運用方法に掛金を投入した場合、その商品は加入者の意志によって購入されたとみなされる」ことです。法律では、「特定期間(3カ月以上)」経過後に、「指定運用方法に関する情報提供(利益の見込みおよび損失の可能性、選定理由、運用の指図をしたものとみなされること)」を義務付け、「猶予期間(2週間以上)」を置くことによって、「加入者の運用指図権を保護し、加入者が自ら運用指図を行うことを促す観点から、丁寧な手続き規定」としています。指定運用方法の値下がりで損失が出る可能性もありますが、その損失も加入者の責任になるのです。

■指定運用方法の最有力候補は「ターゲットイヤーファンド」

 具体的な指定運用方法については、「長期的な観点から、物価その他の経済事情の変動により生ずる損失に備え、収益の確保を図るためのものとして厚生労働省令で定める基準に適合するものでなければならない」(第23条の2)と法律には書かれています。厚生労働省では省令によって、「なるべく具体的な基準を書きたい」としています。そして、着眼点のイメージを「加入者属性」、「金融商品への理解度」、「加入者ニーズ」、「想定利回りや掛金額等退職給付における位置づけ」などとしています。

 もろもろの条件を加味すると、「加入者の年齢により運用できる期間は様々であり、幅があると想定される」、「個人の資産や年齢等によってリスク許容度は異なる」などということが意識され、そうなると、指定運用方法とは「年齢層」などで区分した複数の商品を用意する必要があるという議論になってきます。しかし、法律で決まっているのは、指定運用方法は「1つ」なのです。

 1つで「加入者の年齢により運用できる期間の異なるリスク許容度に対して、おおむね対応できる商品」といえば、「ターゲットイヤーファンド(ターゲットデートファンド)」をおいて他にはありません。論点整理などで厚労省が用意する会議資料を素直に読んでいくと、指定運用方法として意図される商品は「ターゲットイヤーファンド」と読み解けます。

 実際問題、20代で40年近くも運用期間がある加入者に期待収益率ゼロの元本確保型商品を指定運用方法として押し付けると、将来の物価上昇によって実質的にはマイナスの運用効果になりかねません。反対に、退職時期が迫ってきている高齢の加入者に株式を中心にした運用商品を指定運用方法にした場合、万が一にもリーマンショックが起こってしまった場合は大変なショックを与えてしまいます。このような資産運用期間の違いによるリスク許容度の変化に合わせて、運用期間が長くとれる場合はリスクの水準を高め、運用期間が短くなるにしたがってリスクの水準を逓減していくのが「ターゲットイヤーファンド」です。

 現在、事実上の指定運用方法(デフォルト商品)として位置付けられているのは、定期預金などの元本確保型商品が90%以上になります。元本確保型商品は、法律で定める「物価その他の経済事情の変動により生ずる損失に備え」という条件には合わないと目されるため、一般的には見直しが必要と考えられますが、完全に否定されたものでもありません。

■改正DC法の施行でターゲットイヤー型ファンドの時代が来るか?

 「指定運用方法」は、労使協議によって、それぞれの企業型DCにふさわしい商品が決定するというプロセスを踏んで、加入者に周知されます。制度の在り方を検討する社会保障審議会企業年金部会に設けられた専門委員会の議論を聞いていると、意図される「指定運用方法」は「ターゲットイヤーファンド」ということのようでしたが、現実問題として「ターゲットイヤーファンド」の導入企業数は多くなく、また、日本のDC専用ファンドにおけるターゲットイヤー型ファンドの占有率は0.5%程度です。これまでは、ほぼ無視されてきた存在です。

 今回のDC法改正がターゲットイヤーファンドの人気に火をつけるきっかけになるかもしれません。(情報提供:モーニングスター)