「1970年代にYoutubeが想像できなかったように、現在、Rippleが実現しようとしている支払いの固定費をなくしたグローバルな送金ネットワークは、世の中に大きな変化をもたらすだろう」――米国RippleのCTO(最高技術責任者)であるステファン・トーマス(Stefan Thomas)氏(写真)は、4月28日に東京・青山のオラクル青山センターで開催した講演会で、ブロックチェーン(分散台帳技術)や仮想通貨などの新技術がもたらす、資金決済の未来について語った。
Ripple社は、SBIホールディングとの合弁会社、SBI Ripple Asiaを2016年5月に設立し、日本の銀行を中心とした実証研究組織「内外為替一元化コンソーシアム」を組織し、16年10月の設立時に42行だった参加行は、4月末現在では56行に増加している。
SBI Ripple アジアのCEOである沖田貴史氏は、「Ripple社はブロックチェーン(分散台帳技術)を、検証から実用化への転換を促している。特に、CTOを務めるステファン・トーマス氏が開発したInterledger Protcol(ILP)は銀行の元帳(Ledger)どおしをつなぐ画期的な技術。まったく新しいコンセプトによる外為、内為の両面で画期的な決済ネットワークが生まれようとしている」と、Ripple社が実現をめざす新しい決済ネットワークへの期待を語った。
トーマス氏は、「ILP」について「基本的なアイデアはインターネットからインスピレーションを得ている。様々な情報ネットワークをつなげたインターネットによって、情報は自由に世界を流通するようになった。同じように、『お金』や『価値』も高頻度・リアルタイムで流通させることができる。そして、インターネットが私たちの生活を大きく変えたように、価値のインターネット(Internet of Value;IoV)も大きな可能性を持っている」という。
トーマス氏が例示したのは、例えば、現在のオンラインニュースは、1本の記事を読むために画面を覆う多くの広告を目にしなければならないが、IoVは1本の記事を数分の1セントなど現在のオンライン広告料と同額の極少額の料金で読むことを可能にする。あるいは、コーヒーショップでの支払いを顧客は支払いたい通貨やポイントで支払い、ショップ側は瞬時に両替して受け取りたい通貨で受け取ることができるようになる。「この価値のやり取りに、国境も、利用している決済ネットワークも一切問題にならないのがIPLが実現する世界だ」という。
「ネットで行われているサービスと価値のやり取りは、現在はバーターシステムによって成り立っている。記事を読むために見たくもない広告を見せられる、1曲だけ聞きたいにもかかわらず数百万曲を聞ける権利を月額で支払わなければならない。レストランで食事をした対価を皿洗いで支払っているようなものだ。これを、ネットで消費した分だけ、その都度、消費した量だけ対価を支払う仕組みに改めることができる。価値の交換にかかるコストを無視できる水準まで限りなく小さくすることによって実現可能だ」(トーマス氏)としている。
Ripple社は、このようなIoVのネットワークを銀行等の金融機関と連携することによって実現しようとしている。日本を含むアジア地域においては、SBI Ripple Asiaがコンソーシアムを組織して17年3月に実用化試験を実施。ロンドンでは昨年、英国中央銀行も参加したワークショップを実施し、今年6月には独ベルリンでワークショップを実施する予定。「銀行は、海外送金などで相手先の銀行の信用を気にせず送金できるなど、資金決済に関わるコストを大幅に削減することが可能。これまでにない利便性を顧客に提供できる」としている。
米RippleのCTOが語る高頻度・リアルタイム資金決済がもたらすIoVの未来
2017-05-01 16:44

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