大和総研経済調査部主席研究員の齋藤尚登氏は1月27日、「中国経済:成長率目標、6.5%以上への拘泥は不要」と題したレポート(全1ページ)を発表した。レポートの要旨は以下のとおり。

 中国では3月の全国人民代表大会(全人代)で、主要な経済・社会目標が発表される。今年は3月5日に全人代が開幕するが、それを前に、2017年の政府経済成長率目標に関する議論が活発化している。

 例えば、中国人民銀行(中央銀行)の金融政策委員会委員(日本銀行の政策委員会審議委員に相当)である黄益平氏は、「2017年はサプライサイドの構造改革を深掘りしていく上で、新旧牽引役の転換促進に力を入れ、市場メカニズムが資源配分で決定的な役割を果たすようにしなければならない。2017年の経済成長率目標を2016年の前年比6.5%~同7%から同6%~同7%にレンジを広げることで改革を推進する余地を広げることが可能である」旨を主張した。痛みを伴う改革を推進するには、成長鈍化はやむを得ない、との立場である。これに対しては、「2016年~2020年に年平均で6.5%以上の成長を実現するには、2017年も安定成長が望まれ、下振れ余地を大きくすることは得策ではない」といった批判も聞かれる。

 「年平均6.5%以上」は、2016年にスタートした第13次5ヵ年計画の成長率目標であり、具体的には、「小康(衣食住が足りた上でややゆとりのある)社会の全面的完成という目標を達成し、2020年までにGDPと都市・農村一人当たりの所得を2010年比で倍増させるには、今後5年間の実質経済成長率は年平均6.5%以上を維持しなければならない」とされた。

 そもそも「10年で倍増」目標は、2012年11月の第18回党大会で打ち出された長期目標であり、胡錦濤政権の置き土産である(習近平氏は直後に開催された一中全会で総書記に選出)。そして、「6.5%以上」の根拠は、2011年~2015年の実績を踏まえて、残り5年間で計算上何%の成長が必要かという観点から導き出された、やや乱暴なものであった。逆算の結果導き出された「6.5%以上」に拘泥する必要はないように思われる。

 昨年5月に共産党機関紙である人民日報に掲載された権威筋へのロングインタビューは、構造改革の重要性を繰り返し指摘した。実はこの権威筋へのインタビューは、昨年5月が3回目であり、成長重視なのか、改革重視なのか、習近平政権の軸足がなかなか定まらないことが示されている。

 繰り返しになるが、痛みを伴う改革を重視し断行するのであれば、「6.5%以上」の成長に拘る必要はない。その前段階として2017年の成長率目標は6.5%前後と、若干の下振れを容認すると見ているが、果たしてどうなるであろうか?(情報提供:大和総研)(イメージ写真提供:(C)Songquan Deng/123RF)