2017年に入って世界経済には回復の兆しが見え、香港経済の見通しにも楽観ムードが漂って来た。貿易の改善などから今年の域内総生産(GDP)伸び率はおおむね昨年を上回ると予測されている。一方、香港の住宅相場は過去最高を記録し、政府が過熱抑制策を強化してもなお上昇しているが、今年は下落が予想されている。

■米中貿易摩擦が懸念要素

 香港大学経済及商業策略研究所が1月4日に発表した香港経済に関するリポートでは第1四半期の実質GDP伸び率を2・3%と予測。16年第4四半期の2・1%(見込み)から加速し15年第4四半期以降で最も高い伸びとなる。17年通年のGDP伸び率は1・5~2・5%と予測。リポートでは第1四半期に商品輸出・輸入、サービス輸出、投資総額がいずれも前年同期比でマイナス成長からプラスに転じると指摘。商品輸出は同5%増、輸入は同5・1%増、サービス輸出は同3・8%増、投資総額は同5%増と予測。個人消費も同1・5%増となり、前年同期の同1・2%増を上回るとみている。

 恒生銀行の薛俊昇・首席エコノミスト代行は6日、香港総商会の講演会で今年の香港経済の見通しを示し、「世界経済に対する信頼向上で昨今の金融市場のムードは改善され、投資や消費の拡大に有利」として今年の世界経済は昨年よりやや改善するとみる。小売業の下振れも緩和し、香港のGDP伸び率は昨年の1・4%から今年は1・8%に上昇すると予測。米国のトランプ大統領就任で世界経済と貿易への影響が懸念されているが、保護主義は米議会が容認しないため「トランプ氏の政策による中国本土や香港への貿易への打撃を憂慮するのは時期尚早」と述べた。

 ほかにJPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、シティバンク、香港上海銀行(HSBC)、スタンダード・チャータード銀行なども今年のGDP伸び率を1・8%と予測している。

 日本経済新聞社と金融統計機関マーキットが5日に発表した16年12月の香港の購買担当者指数(PMI)は50・3で、11月の49・5から0・8ポイント上昇。15年3月以降の21カ月を経て、初めて景況判断の目安となる50を上回った。地場のビジネス環境は長期的な下振れサイクルから底を打ち回復に向かっていることが反映された。マーキットのエコノミストは「中国本土の製造業も安定的な成長が見られており、今年の香港のビジネス環境の安定に効果をもたらす」とコメントしている。

 特区政府統計処が発表した16年11月の輸出総額は前年同月比8・1%増で、10月の同1・8%減から好転した。伸び率は14年6月以降で最も大きい。香港貿易発展局(HKTDC)は輸出量が16年のゼロ成長から17年は0・5%増へ、輸出総額は16年の2%減から17年はゼロ成長に改善すると予測している。

 HKTDCの関家明・研究総監は昨年12月、「米国のトランプ次期大統領による保護主義政策で米中貿易摩擦が巻き起こったり、欧州連合(EU)や日本のさらなるデフレ、資本市場の制御不能、中国経済の急速な減速、地政学的リスクの爆発といった深刻なマイナス要素を除けば、来年の香港の輸出は徐々に安定する」との見方を示した。

■住宅相場は下落を予測

 不動産評価や市場統計作成などを行う特区政府差餉物業估価署が発表した16年11月の住宅価格指数は306・6。8カ月連続の上昇となり、ピークに当たる15年9月の306・1を0・2%上回り過去最高に達した。返還バブルのピークである1997年10月の172・9に比べると77・3%も高い。

 国際通貨基金(IMF)が16年10~11月に香港を視察した後に発表したリポートによると、住宅価格は08年から15年の間で2倍近くに上昇しており、外部の市況が疲弊しているため、間もなく天井を打つと予測。家計に対する住宅ローンの負担比率も高いため、米国が利上げすれば香港の住宅価格は急落し、実態経済に影響する可能性もあると指摘した。利上げと世界市場、中国本土経済、住宅市場の変化が今後の香港経済にとって下振れ要因になるという。特区政府に対しては住宅供給の増加や不動産投機抑制策などで住宅価格の上昇を食い止めるよう提唱した。ただしリポートは16年11月4日に不動産市場の過熱抑制策が強化される以前の内容となっている。

 特区政府土地註冊処が発表した16年通年の不動産取引の登録件数は7万3004件で、15年に比べ4・1%減。取引高の合計は5328億6000万ドルで、15年に比べ2・9%減。登録件数は2年連続の減少となり、記録のある1996年以降では2013年の7万503件に次いで2番目に少ない。うち住宅の登録件数は5万4701件で、15年に比べ2・3%減。中古物件は同1%減の約4万件で過去最低となった。特に12月は抑制策強化で住宅物件の登録件数が前月比47・3%減となった。

 香港城市大学などは1月9日、中国本土、香港、マカオ、台湾の16年第4四半期の消費マインドを表す「両岸4地消費者信心指数」を発表。香港では昨年12月に1007人を対象に調査が行われた。消費マインドが最も低いのは住宅購入の45・1点で、前期より20・9ポイントも下落。16年では最低レベルになるなど住宅市場の見通しが悲観されている。

 不動産代理などを経営する中原集団の施永青・会長は9日、東亜銀行主催のフォーラムに出席し、不動産市場の動向について見方を示した。施会長は「不動産市場は健全ではなく、経済の形勢が急転すれば住宅相場は下落する」と指摘。住宅相場は長年にわたり市民の購買力からかけ離れており、市場は新たな購買力に支えられているわけではなく、主に投資家の累積資金で取引されていると説明した。市民に対し「地価の高止まりだけを見て不動産市場が良好だと思ってはいけない」と警告し、今年は住宅相場が8~13%下落すると予測。特に下半期の下落幅が大きいという。また東亜銀行の李民橋・副CEOは、米国の利上げは香港経済に影響を及ぼし、特に不動産業界と小売業界が打撃を受けるとみている。

 今年の住宅相場はおおむね下落が予想されているが、さらにHSBCの劉智傑・元副総経理は香港の不動産市場が12~18カ月以内に崩壊し「1990年代の日本のように失われた20、30年がやってくる」としてSNSで市民に警鐘を鳴らした。3月の行政長官選挙で誰が当選するのかも不動産市場の動向を左右することになるだろう。(執筆者:香港ポスト 編集部・江藤和輝)(イメージ写真提供:123RF)