立法会秘書処は12月5日、青年新政の梁頌恒氏と游〓禎氏の議員資格喪失の判決を受け、2人が擁していた議席が空席となったことを官報に掲載した。「香港独立」の動きに対しては4万人規模の反対集会が行われたほか、民主派は市民の支持を失う懸念から独立志向とは一線を画すようになり、独立派の孤立化が進んでいる。(〓は、草かんむりに惠)

 高等法院は11月15日、特区政府律政司が申請した青年新政の2人の議員資格喪失を求める裁判で政府勝訴の判決を下した。裁判官は「2人が10月12日に行った宣誓は、彼らが1国2制度の原則とこの原則の下での1国の重要性を認めていないことが客観的かつ顕著に表れている」と指摘。基本法104条と宣誓及声明条例に基づき宣誓していないため、2人は議員資格を喪失、議席は空席と宣言した。立法会議長が2人に再宣誓させることを禁じたほか、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会が下した基本法解釈があろうとなかろうと今回の結論は同じと説明した。

 青年新政の2人は17日、判決を不服として上訴を申請。だが高等法院は30日、上訴を棄却した。2人の弁護人は陳述で全人代常務委による基本法解釈は基本法改正に当たるとの疑問を呈し、このため拘束力はないと指摘。これに対し上訴庭は「その疑問には何ら根拠はない。さらに香港の法廷に全人代常務委による基本法解釈が法改正に当たるかどうかを批評する権限はない」と結論づけた。

 梁氏と游氏は裁決を不服として終審法院(最高裁判所)への上訴を考慮すると表明したが、再び基本法解釈を招く恐れや、7けたの保証金が必要であるため慎重に検討すると述べた。法律関係者によると、ここまでの訴訟費用は700万~800万ドルと見積もられる。500万ドルを目指して始めた募金活動では、まだ36万ドルしか集まっていないという。

 立法会行政管理委員会は11月24日、全人代常務委による基本法解釈の「宣誓を拒否した者は関連の職務を行使できず、福利を享受することもできない」という内容に基づき2人が受給した議員報酬、手当、事務所運営経費の返納要求を決定。10月1日にさかのぼって計算することとし、2人はすでに186万ドルを受け取っているため、1人平均93万ドルを返納しなくてはならない。

 立法会の陳維安・秘書長は立法会条例35条に基づき、高等法院と上訴庭がそれぞれ11月15、30日に下した判決により、直接選挙枠で梁氏と游氏の持つ議席が空席になったと宣言した。また秘書処は2人に対し議員報酬・運営経費を12月19日までに返納するよう通達。2人にはさらに数百万ドルに上る訴訟費用の負担があるため、破産申請するとみられている。

 他の非親政府派議員にも学生やタクシー業界など市民からの訴訟が多数持ち上がる中、特区政府律政司は12月2日、高等法院に4人の議員資格喪失を求め提訴した。対象は劉小麗氏、姚松炎氏(建築・測量・都市計画・緑地設計業界選出)、羅冠聡氏(香港衆志)、梁国雄氏(社会民主連線)。同議員4人は2日夜、行政長官弁公室までデモ行進し「直接選挙枠での民主派の否決権を奪う狙いがある」と指摘した。直接選挙枠35議席のうち先の裁判で空席となった青年新政の2議席を除くと親政府派16議席、非親政府派17議席となっている。今回の裁判で直接選挙枠の3人が資格喪失となれば非親政府派は当面14議席となり、職能別選挙枠とともに否決権を失う。

 政府が提訴に踏み切った背景には世論の後押しがあった。民主建港協進連盟(民建連)など親政府派53団体の召集で「香港独立」に反対し全人代常務委の基本法解釈を支持する集会が11月13日に立法会周辺で行われた。1000余りの団体が呼応し主催者発表で4万人余り、警察の推計ではピーク時に2万8500人が参加した。

■パッテン元総督も批判

 植民地時代のクリストファー・パッテン元総督が陳方安生(アンソン・チャン)元政務長官の招きで香港を訪れた。パッテン氏は11月25日、香港外国記者会の昼食会で講演。中英共同声明にも中国の国家統一と領土保全が明記されていることを挙げ、「『香港独立』は不可能で、成熟し十分民主的な社会では独立がもたらす荒唐無稽な行為が現れてはならない」と批判したほか、独立志向が民主への支持を削ぐと指摘し、「セントラル占拠行動で民主を勝ち取ろうとした若者らの道徳的立場が一連の独立騒ぎで失われるのは悲劇だ」と述べるなど、民主派が独立派と一線を画すように促したといえる。

 28日には香港大学で行われたフォーラムに出席。質疑応答の際、香港大同窓生である本土民主前線の梁天〓氏が「香港人は中共政権に反抗しなければ自らの権利を放棄することにならないか」と質問。パッテン氏は厳粛な表情で「あなたの見方は完全に間違っている。今後数年のうちに中共政権が倒れて香港が独立できると思っているなら自らを欺き人も欺く見方だ」といさめた。さらに「学生らが民主や普通選挙の追求を『香港独立』の追求に変えるなら香港人に対する国際的な支持を失い、市民や家族の支持も失うだけ」と述べたほか、「自決」と「独立」の主張は本質的に同じと指摘した。(〓は、王へんに奇)

 先に青年新政の2人が立法会本会議が行われている議場に乱入した際、警備を阻止するため非親政府派議員が数人で取り囲んで「護送」して議場に招き入れていたが、それに加わっていた公民党の毛孟静・議員は11月14日、離党を発表した。毛氏は公民党創設時からのメンバーだが、党内では本土派や独立派に近い路線を主張してきたことから個人的理念と党の立場との間に亀裂が生じた。今後は別団体「香港本土」のメンバーとして引き続き立法会にとどまるという。公民党は19日に年次党大会を開催し、新たな党執行部を選出するとともに「香港独立が実際可能とは思わない」と表明した。ある幹部は、昨今の宣誓問題をめぐり、やや民主派寄りだった市民がやや親政府派寄りになったことを認めた。

 特区政府は11月30日、中央政府から「同日より一部立法会議員とその他の者に対し実施している中国本土への入境規制を緩和する」との通達を受けた。これらの者の「港澳居民来往内地通行証」(通称「回郷証」。香港マカオ市民の本土での身分証)申請をあらためて受け付けるとなっている。独立派や前科者は交付されるとは限らないが申請はできるという。ある関係者は、天安門事件以来の大きな転換と指摘。中央はかねて民主党などの穏健民主派と独立派などの過激な勢力に対する対応を区別しようとしていたが、穏健民主派が過激派に引きずられていたことが妨げとなっていた。民主党が12月4日の党大会で選出した胡志偉・新主席は同党初の回郷証を持っている主席で、中央との対話にも前向きだ。民主派内の過激派と穏健派による綱引きもようやく終わりを告げるかもしれない。(執筆者:香港ポスト 編集部・江藤和輝 編集担当:サーチナ編集部)(イメージ写真提供:123RF)