全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は11月7日、青年新政の梁頌恒氏と游〓禎氏の就任宣誓をめぐる問題で香港基本法104条の解釈草案を採択した。全人代常務委による基本法解釈は返還後5回目。宣誓は法定の形式と内容で行うことや、宣誓を拒否すれば相応の公職の資格を喪失することが確認された。これに基づき青年新政の2人は議員資格を喪失する見通しだ。(〓は草かんむりに惠)

 10月12日に開会した立法会の就任宣誓で、青年新政の2人は「Hong Kong is not China」と書かれた旗を掲げ、宣誓に中国の蔑称である「支那」や英語のスラングを盛り込んだ。基本法104条では「香港基本法を擁護し、中華人民共和国香港特別行政区に忠義を尽くす」と宣誓することが義務づけられているが、2人の宣誓はこれに沿っていないため無効とみなされた。

 特に「支那」は大きな反発を招き、立法会議事堂前で度々行われた抗議活動には元軍人も参加し、新聞には連日のように抗議広告が掲載された。「セントラル占拠行動」に反対するため設立された「保普選反占中」は13日、フェースブックで青年新政の2人に公開謝罪と発言撤回を要求、立法会には解任を求める署名活動を始め、10月末までに100万人余りが署名した。

 特区政府律政司は18日夜、2人の就任宣誓のやり直し禁止と議員資格喪失を求め高等法院(高等裁判所)に緊急開廷を申請した。政府側弁護人は「2人が立法会議員の職位を認められれば、基本法を擁護しなくとも立法会議員になれると世界と大衆に誤解させる」と陳述。臨時禁止令によって19日に予定していた宣誓やり直しを阻止する構えだったが、裁判官に却下された。だが12日の宣誓は基本法104条と宣誓及声明条例21条に違反、立法会条例73条に基づき議員資格喪失の声明を求める申請は受理された。ほかに市民による訴訟も持ち上がった。

 民主派からは政府による提訴は三権分立を破壊すると批判が上がったが、袁国強・司法長官は宣誓が基本法に明記された憲法責任であり、「立法機関と行政機関に見方の食い違いがある場合は法廷で解決するのが妥当」と指摘。基本法の起草に携わった全人代基本法委員会委員の譚惠珠氏は「香港の政治体制は行政主導で、行政と立法は相互に協力・けん制し、司法は独立した裁判権を持つ。米英式の三権分立ではない」と説明。基本法48、76条などに行政主導が示されていることを挙げた。

 立法会の梁君彦・議長は18日、青年新政の2人を含む5人の宣誓を無効と裁定。19日にやり直しとなったが、親政府派議員が途中で集団退席して流会となり青年新政の2人は宣誓できなかった。親政府派議員39人は21日、2人の再宣誓を先送り処理する要求を連名で議長に提出。親政府派議員を取りまとめる廖長江氏は「2人の言論に対する全香港市民、全中国人、世界の華人の感情を考慮すれば2人を議員にすべきでない」と述べ、事件はすでに司法手続きに入っているため法律上の結果が出るまで再宣誓させるべきでないと指摘。さらに議長が受け入れない場合、親政府派は流会を引き起こすなどで再宣誓を阻止すると強調した。次の本会議の前日に当たる25日、梁議長は「2人の宣誓を議事日程に入れれば立法会は停止する」と述べ、2人の宣誓は特区政府が起こした訴訟が終了するまで棚上げとした。

 25団体からなる「反辱華反港独大連盟」は26日、青年新政の2人が「世界の華人を侮辱し香港独立を宣揚している」として議員資格取り消しを求める抗議集会を立法会議事堂前で開催。警察の推計でピーク時に8720人が参加した。

 同日は2人が議場に入ることは禁じられていたが非親政府派議員が取り囲み「護送」して議場に入れ、梁議長が退席を命じたが2人が拒否したため休会を宣言した。次の本会議の11月2日にも2人が「護送」されて乱入。宣誓台に駆け寄って宣誓文を読み上げた。警備員が連れ出そうとするのを非親政府派議員が阻むなどで混乱。議場を移して会議を再開したものの、2人は本土民主前線の黄台仰氏ら十数人を伴って再び乱入を図り、衝突で警備員6人が失神・負傷し病院に運ばれた。

■23条立法が現実味帯びる

 青年新政の2人の議場乱入で「護送」に加わっていない民主党は2日夜、青年新政に対する批判声明を発表したほか、宣誓について2人に反省を促した。民主党はかねて独立反対の立場を明確に示しているため一線を画したといえる。だが一方で基本法解釈への抗議には積極的であるため、青年新政の2人を擁護しているとの批判も上がっている。

 法解釈が決まったのを受け民間人権陣線は6日、解釈反対のデモ行進を開催。青年新政の2人を含め警察の推計ではピーク時に8000人が参加。だが、デモ隊のうち4000人は途中から中央人民政府駐香港特区連絡弁公室(中連弁)に向けて行進。午後7時ごろから中連弁前に集結したデモ隊は警官隊と衝突し車道を占拠。一部は傘や竹ざおを持ち、路上のレンガを剥がして警官に投げるなどし、婦警2人が負傷。翌午前3時までに衝突は収束し、4人が逮捕された。

 基本法158条に基づく解釈では104条で規定された「就任時は法に基づき宣誓しなければならない」の具体的含義として(1)宣誓は法定の形式と内容で行わねばならない(2)宣誓を拒否すれば相応の公職の資格を喪失(3)故意に法定宣誓文と一致しない言葉または不誠実、不謹慎な方式で宣誓した場合も宣誓拒否とみなす(4)宣誓やり直しは認めない――などと説明。さらに虚偽の宣誓または宣誓の後で宣誓文に違反する行為がみられれば法的責任を負うとされる。

 全人代常務委員会副秘書長兼基本法委員会主任の李飛氏は7日、解釈草案の採択後に記者会見を行い「返還以来、少数の者が1国2制度の方針・政策に挑戦し、故意に基本法を曲解してきた」と指摘し、青年新政の2人は「宣誓式で公然と国家と民族を侮辱し、国家分裂と香港の繁栄・安定を破壊する狙いを十分露呈した」と述べた。さらに「香港の一部法律権威らしき者は基本法制定の時から歪曲した説を散布し、基本法実施から何年を経ても勝手な歪曲を続け、世論の落とし穴をつくり『法解釈は香港の司法の独立への干渉』と述べている」と批判した。

 全人代常務委法制工作委員会の張栄順・副主任は「『香港独立』の本質は国家分裂で、香港独立の言行は1国2制度の方針・政策や国家憲法に深刻に違反する」と説明。基本法23条で明確に国家分裂の行為を禁じているほか、1、12条に違反するため独立を宣揚する者に議員の資格はないと明言した。梁振英・行政長官も同日記者会見し、香港独立などの主張が現れたことで「23条に基づく立法は未完了の憲法責任であるだけでなく、現実的意義があると中央政府に認識させた」と指摘。23条立法の可能性も高まってきた。(執筆者:香港ポスト 編集部・江藤和輝 編集担当:サーチナ編集部)(イメージ写真提供:123RF)