■ 中国経済はまさに転換を迫られている

 2016年3月5日に開幕した全国人民代表大会(全人代=国会)で、中国政府は中期的な経済社会政策目標「第3次五カ年計画」(2016-20年)として、年平均6.5%以上の経済成長を目指すことを盛り込んだ。

 中国経済の動向は今や世界経済リスクの要因の1つと見なされているが、中国経済の不振は単なる景気の下降局面というよりも、これまでの経済構造が行き詰まっていると見るべきであり、中国経済はまさに転換機を迫られているというべきであろう。

■ 再び重厚長大の国有企業群が膨張することとなった

 これまでの中国経済を支えてきたのはインフラ投資や設備投資であった。これらの投資を担ってきたのが重厚長大産業に属する各地の国有企業であった。国有企業改革によって地方の中小国有企業の整理は進んで、ある程度の民間重視政策が進められたが、2008年のリーマンショックによって大規模な景気対策が講じられ、再び重厚長大の国有企業群が膨張することになった。

 その結果、国有企業は、政府とのつながりや補助金、有利な融資条件などで量的拡大に走り、多額の借金と過剰設備、過剰在庫を残すに至ったのである。

■ 「ゾンビ企業」の整理は果たして可能か?

 中国政府はいま、破綻しかけている鉄鋼や石炭関連の国有企業を整理しようとしている。いわゆる「ゾンビ企業」だ。しかしながら、共産党政権の基盤そのものに関わっている国有企業体制の改革は容易なことではない。

 金融、エネルギー、素材、大型機械といった産業の命脈を握るこれらの分野で寡占体制を崩して競争を促し、高生産性を可能にする民間企業の発展を促進することこそが本来あるべき改革として期待されているのである。

■ 「国家・主権の安全保障」に関する方針が提示された

 1978年に提唱され、90年代前半から本格化した改革開放によって中国は豊かになった。しかしながら1人当たりのGDPは約8000ドルの中進国水準にとどまっている。2020年代に入ると、生産年齢人口ばかりか総人口も減少に転じるなど、成長余力、財政余力が低下する可能性が高まるばかりか、高齢化で社会保障コストの増大も見込まれる。

 経済構造を転換する方向に踏み出さないと中期計画目標の達成は実現不可能となるであろう。しかしながら国有企業改革に伴う大量の失業者の出現は社会不安を招きかねない。

 そこで今回の社会政策目標には胡錦濤前政権時代の11年に公表された第12次五カ年計画には見られなかった「国家・主権の安全保障」に関する方針が提示された。

■ 習近平国家主席の政治姿勢が表れた内容

 「国家・主権の安全保障」は、「インターネット空間で敵対勢力やテロリストが破壊活動を浸透させることを抑止する」方針を示した。また、「反スパイ工作を強化する」、「イデオロギーの安全を切実に守り抜く」とも明記した。習近平指導部として、今後も、ネット管理や思想・言論統制を強め、体制安定を最優先する意向を示したものである。

 胡錦濤政権時代の五カ年計画には、「民主制度を健全にし、民主ルートを広くし、民主選挙を実行する」などと明記されていたが、今回の習近平五カ年計画は「社会主義政治制度の優位性を十分に発揮する」と強調しており、習近平国家主席の政治姿勢が表れた内容になっている。(執筆者:日本経営管理教育協会・水野隆張 編集担当:如月隼人)(写真提供:日本経営管理教育協会/遼寧省鞍山製鋼)