大和総研経済調査部主席研究員の齋藤尚登氏は1月21日、中国経済について「ダウントレンドの中の循環的底打ちも」というレポート(全12ページ)を発表した。緩やかな経済成長率の鈍化が進む中国経済だが、不動産開発投資の底打ちなどによって2016年は大きな下振れは回避されると見通している。ただ、当面のリスク要因として「人民元の暴落」をあげ、当局による人民元の買い支えを減らし、「人民元の下落をある程度放置する」ことが肝要とした。レポートの要旨は以下の通り。

◆国家統計局によると、2015年の中国の実質GDP成長率は前年比6.9%と、2014年の同7.3%から減速した。政府年間目標は、2014年は同7.5%前後、2015年は同7.0%前後であり、その中心値を2年連続で下回ったことになる。

◆2016年3月5日に開幕する全国人民代表大会(全人代=国会)では、2016年の政府成長率目標は2015年と同じ前年比7.0%前後に設定される可能性が高い。2015年の実績同6.9%を四半期毎に見ると、1月~3月以降、前年同期比7.0%、同7.0%、同6.9%、同6.8%と緩やかな成長率低下が続いた。これ以上容認できる下振れ余地は限定的であり、追加金融緩和やある程度の財政政策など景気下支え策が強化されるとみている。2015年12月の中央経済工作会議は「積極的財政政策を強化し、財政赤字のGDP比率(2015年予算では2.3%)を段階的に引き上げて、財政支出や政府投資を適切に増やす」とした。

◆大和総研は、2016年の実質GDP成長率を前年比6.8%と、2015年の同6.9%とほぼ変わらずと予想し、大きな下振れは回避されるとみている。中国の経済成長は長期的なダウントレンドに入ったと判断されるが、短期的循環的な成長率の底打ちやある程度の回復は想定される。鉄鋼、セメントなど裾野産業が広い不動産開発投資の底打ち・回復は、そのきっかけとなる可能性があろう。

◆当面のリスク要因には、外貨準備の「浪費」による人民元暴落リスクがある。中国では景気テコ入れのための金融緩和が続く一方で、米国は利上げ局面に入った。元安(ドル高)圧力が高まる可能性があるなか、それを通貨当局が元買い(ドル売り)介入で阻止しようとすればするほど、外貨準備は減り、さらなる元安観測が高まり、資本逃避の動きが加速するというスパイラルに陥る可能性が否定できなくなる。一方で、通貨当局が為替介入を減らして、人民元の下落をある程度放置すれば、少なくとも外貨準備の「浪費」は抑えられ、スパイラル的な人民元暴落シナリオの発生の可能性は低下すると期待される。2015年末で3.3兆米ドルの外貨準備を保有する中国にしても長期的にそれを「浪費」し続ける余裕はない。(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)