1980年代半ばから日本では国内企業の生産拠点が海外に移転し、国内産業が衰退する現象が問題視されるようになった。90年代には圧倒的に安価な労働力を持つ中国に生産拠点を移す企業が増えた。いわゆる産業の空洞化だ。人件費の上昇が続く中国でも産業の空洞化が問題になりつつある。

 中国メディア捜狐は「中国人の消費は減ったように見えない、しかし工場閉鎖は増えている」と論じる記事を掲載した。中国国内には大手スポーツ用品メーカーや食品メーカーの工場など、ありとあらゆる分野の企業が工場を設置し、これまで「世界の工場」の役割を果たしてきた。しかし、近年は多くの企業が工場を東南アジアや本国へ移しており、記事は外資企業が中国を離れていく理由を考察している。

 記事、外資企業が中国から工場を移転させている最大の要因として、「中国での生産コストの上昇」を挙げている。中国で人件費が上昇していることは数年前から指摘されていることだが、英誌「エコノミスト」の報道を引用し、「2001年から現在まで中国製造業では人件費が平均で年12%も上昇した」と伝えている。中国での生産コストが急速に上昇する現状に、多くの海外企業が移転を決意するのは当然と言える。

 また別の理由として「生産の自動化」を挙げている。ドイツのあるメーカーは米国に新設する工場について「事前の試験段階で10人程度が参加するが、それ以降は完全オートメーション化して生産できる」と述べた。中国に限らず、特別な技能を持たない単純労働者の必要性が世界的に失われつつあることが分かる。中国では労働市場の流動性が日本より高く、労働者もすぐに転職しがちだ。そのため熟練労働者を育てにくいという意見もある。

 日本で起きた産業の空洞化は日本企業が海外に生産拠点を移すことにより発生したが、中国では外資企業の「撤退」によって発生している。中国は外資メーカーを呼びこむことで労働者に仕事を提供し、経済を成長させてきたが、外資が工場を撤退させた後に残るものは何かあるのだろうか。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)