アイティメディア <2148> は、国内最大規模のIT総合情報ポータルをはじめ、産業分野に特化した専門サイトを運営するオンラインメディアとして成長を続けている。2016年3月期は、売上高42億円(前年比32.8%増)、営業利益6億4000万円(同30.9%増)と成長が加速する見通し。同社代表取締役社長の大槻利樹氏(写真:右)に、「相場の福の神」として活躍するSBI証券投資調査部のシニアマーケットアナリストの藤本誠之氏(写真:左)が、今後の展望を聞いた。

――貴社は1999年の設立でIT分野のインターネット特化型メディアとして、月間でトータル1億3000万ページビュー(PV)、ユニークブラウザ(訪問者数)は2500万人を集める大きなメディアになっています。ビジネスモデルの特徴は?

 当社はソフトバンクを母体に生まれた企業のひとつとして、メディア部門を事業領域として展開しています。ソフトバンクグループとして、積極的に成長を目指す姿勢、また、ビジネスモデルを革新し、その分野でナンバーワンになるという基本的な考え方を同じくして経営しています。

 メディアとしての特徴は、一般の新聞やテレビなどと異なり、ビジネスや産業寄りのコンテンツを重視しています。現在、社内に約100名の記者と、外部に約1000名の寄稿者を抱えていますが、コアになっているのは、コンピュータとテクノロジーを扱うIT分野です。そこから派生して、半導体、電機、CAD、FA、ロボット、未来自動車、エネルギーなどの分野にコンテンツを広げています。

 技術のことを書けるジャーナリスト集団としては、日本でも最大のメディアになってきたと思っています。このため、既存の新聞や雑誌などの大手メディアからIT関係の専門的な立場でコメントを求められるケースも増えています。また、ヤフーなどの大手ポータルサイトやスマホのニュースアプリに記事の提供を行うなど、既存のメディアからも当社の特徴が評価されています。

――メディアとしては、1億PVを超える閲覧回数など、規模の大きさは重要な指標になると思いますが、今後のPV拡大についての見通しは?

 メディアとしてPVの拡大を追うことは一つの考え方ですが、当社では、量を追うことよりも、1PVの価値を高めることを重要視しています。

 PVの中味について考えると、たとえば、大企業の部長クラスの人が自分のデスクから事業戦略の立案のために見る情報のPVと、学生が休日や深夜にある掲示板が炎上している内容を見るPVも、1PVには変わりないのですが、広告主の視点で判断すると、自ずと見られているページの価値が違います。

 当社独自のメディア価値については、1PV当たりの単価(月間広告収入を月間PVで除した数値)を計算したところ1PVが約3円に相当したのですが、同時期に他の主だったオンライン情報サイトと比較すると3倍超の単価になっていました。この価値を高めることが重要であると思っています。

――PV当たりの価値を高める方法は?

 メディアの収益化の手段としては、情報へのアクセスに対する(有料)課金モデル、そして、広告を表示して表示回数等で広告収入を得るモデルの2つしかなかったのですが、当社では、ここに第3の収益モデルを作り出そうとしています。

 それは、「リードジェネレーション(リードジェン)」といって、「リード」(見込み客)を獲得し、それを提供するビジネスです。北米発で「マーケティングオートメーション」という概念が大手企業を中心に急速に広まっていますが、それをメディアが支援するものです。

 これまで、日本において有効な「リード」を獲得する方法は、展示会で出展したブースを訪ねてくださった方から名刺を集め、後日、資料等を送付するという手段が取られてきました。この展示会の機能を、オンライン上で実現しようというものです。

 アイティメディアが提供する専門的な技術情報に関心のある方々は、それぞれの法人を代表して自社の課題解決を検討されていることがほとんどです。たとえば、個人情報の漏えいが社会的な問題になりますが、その際に標的型攻撃への対抗手段を紹介する記事を読んでいる人は、自社サイトのウイルス対策の強化を課題として意識していると考えられます。同じ人が、ウイルス対策関連の記事を複数読んでいる場合は、ますますウイルス対策を企業として考慮していることの可能性が高まります。このような、個々の読者の行動によって、個々の読者、ひいてはその企業の興味・関心を知ることができるのです。

 当社では、事前にプロフィールを登録していただく段階で購読履歴の活用について同意していただき、かつ、個々の記事を読むたびに閲覧履歴を情報として活用することに同意していただくという2段階の承諾を得ることによって、記事の閲覧内容を分析し、有効な「リード」を獲得することが可能になります。

 読者にとっては、業務上の課題解決策について提案を受けることは、比較検討の材料を増やすことにもなり、有益な情報提供の機会を得ることにつながります。これは、BtoBで産業分野の情報を取り扱っているからこそ成立するビジネスモデルだといえます。

――「リードジェネレーション」とは、貴社がリクルートホールディングスから「キーマンズネット」事業を譲り受けるというプレスリリースを発表されたときにも使っていた言葉です。実際に、日本においても機能するサービスになっているのですか?

 「キーマンズネット」は、日本で最大のIT関係の会員データベースを有する事業でした。当社では「TechTargetジャパン」という会員組織があり、国内2位だったのです。これら事業を統合することによって、IT分野では圧倒的に日本最大のデータベースを有することになりました。

 リードジェンは、米系の大手IT企業が中心になって日本での活用を始めたものですが、国内企業にも広まりつつあります。今年4月に「キーマンズネット」事業を譲り受けたこともあり、リードジェンに関する売上は、今第1四半期に対前年比2.2倍に伸びました。今通期でも同レベルの成長を見込んでいます。

 私どもでは、リードジェンについて「展示会やイベントのクラウド化」と紹介しています。見込み客との出会いの場として、大規模な展示会は、これまで有効な手段だったのですが、規模の大きな展示会は1年に何度も開催されません。ところが、営業部隊では常に新しい見込み客の情報を必要としています。オンラインの情報を分析することによって得られる見込み客情報は、1年365日・24時間で常に更新され続けています。必要なタイミングで、その都度、新鮮な「リード」の情報が得られるということには、大きなニーズがあると考えます。

――今後の展望は?

 「キーマンズネット」の営業譲受によって圧倒的に厚みが増したIT分野のリードジェン事業に磨きをかけていきたいと考えています。この分野はデータベースの構築と、そのデータを分析するノウハウが重要になるのですが、すでにリージェン事業の開発に着手してから9年ほどの歳月をかけて取り組み、完成の域に達していると感じています。現在、大手の経済メディアなどで「リードジェンを提供する」という話が聞こえ始めていますが、この分野での当社のサービスレベルを実現することは大変なことだと思います。さらに、当社では2年以内に次期システムを導入する計画で投資をしていますので、より明確に差別化したサービスとして提供していきたいと考えています。

 さらに、現在は売上高の80%程度をIT分野から得ていますが、リードジェンという仕組みを、半導体、電機、FA、CAD、ロボット、エネルギー、交通システムなどの産業テクノロジー分野に広げていくことが可能だと考えています。特に、近年のIoT(Internet of Things)の発展によって、あらゆる産業分野にIT技術を活用していこうという機運が高まっています。この流れに後押しされて、当社もより広い分野へと活躍の余地が広がっていると思います。

――リードジェンという新しいビジネスモデルは大きな強みだと感じます。一般にネットメディアは効果的なマネタイズ手法について足踏みしているところが多いことを考えると、貴社は一歩抜け出したといえそうです。また、リードジェンの分野で競合が出てきたという話でしたが、サービスの枠組みは似せられても、その中味まで追いつくのは大変な努力を要するでしょう。さらに、先行投資をすることによって、決定的な差が生まれるかもしれません。今後の活躍が楽しみです。

 ありがとうございます。当社は、データウエアハウス(データの倉庫)として、すでに国内の主要企業1万社から毎日コンタクトがあるという実績があります。その一つ一つのコンタクトを分析することによって、世の中の産業が、どの分野に関心を強めているのかをリアルに把握することができます。このように手にしたビッグデータを加工して、経営者の方々が欲しいと思う情報として切り出すことによって価値が生まれるのです。

 すでに、各企業のニーズによって最適なデータを届ける直販部隊が100名体制で稼働しています。開けてきたリードジェンという新しい分野で、さらなる成長をめざします。(編集担当:徳永浩)