日本企業(中国)研究院執行院長で、評論家としても活躍する陳言氏はこのほど、日本が素晴らしい製品を生み出す理由を考察する文章を発表した。「経済学だけでは、答えを見つけることが難しいだろう」として、極めて安定した社会の中で、日本人が「飛躍」ではなく「改善」を積み重ねてきたことが大きな理由との見方を示した。

 陳氏はまず、60年ほど前の日本製品には、「安かろう、悪かろう」のイメージがつきまとっていたと指摘した。確かに戦前や戦後すぐの時期における日本製品は欧米製品に比べて相当に劣っていたという。しかし現在は、製品の品質の高さは世界一と言って過言ではないという声も珍しくない。

 しかし陳氏は現在の日本企業が素晴らしい製品を生み出していることについて、「経済学だけでは、答えを見つけることが難しいだろう」と主張。その理由は、「超安定社会」だ。山口県の「萩焼」を例に、中国の陶磁器とは比較にならないほど短い「歴史」だが、伝える家が、連綿と続いていると指摘。「製法が数百年にわたって、一代、そして次の一代へと、伝承する。そして現在の逸品となった」と主張した。

 陳氏は、日本のような「超安定社会」では、革命的飛躍ではなく、「ほんのわずかずつの『改善』をたゆまず繰り返すことで、大きな進歩を遂げる」との見方を示した。

 中国で、「日本のすばらしい電化製品」として注目を集めているのが洗浄機能付き便座だ。陳氏は日本人に「トイレを清潔にする」との考え方が強いと指摘。飲食店を例に「日中のトイレ」を比較。中国では「美味しい料理を客に出しても、トイレが清潔な店は多くない」と主張。しかし日本では、「トイレの清潔さへの要求が、われわれの想像を超えている。厨房並みの衛生を求められる」と紹介した。

 そして、日本のトイレは、「家庭では最初、便座の冷たさを嫌って布のカバーを用いた」、「暖かい便座の登場でカバーはなくなった」、「節電タイプのものが登場」、「光触媒を用いた除菌タイプの便器も導入された」などと、現在の洗浄機能付き便座も、少しずつ改良を加えた結果、到達した商品と説明した。

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◆解説◆
 陳氏が主張する「超安定社会の日本」だが、近現代史に限っても日本は明治維新から第二次世界大戦の敗戦、米国主導による戦後体制の確立と、さまざまな変化を経験してきた。しかし、革命と内戦が長く続き、その後も大躍進、文化大革命、改革開放と、「動乱と大変化」が連続した中国と比べれば、日本は比較的安定していたと言ってよい。

 陳氏が着目した、「日本における伝統のあり方」は興味深い面がある。日本における伝統は「主流ではなくなっても、長く伝わる」傾向が強く、中国の場合には「全国的に大変化が発生し、古いものが消えてしまう」ことが、案外多いからだ。例えば、唐代に上流階級が楽しんだ「サロン・ミュージック」は中国では消滅してしまったが、日本では「雅楽」として、変化はあったものの現在も残っている。

 日本では、「社会のどこかに残されていた伝統」が、新たなものを生み出す「素材」になることが珍しくない。たとえば「抹茶」だ。日常生活では煎茶が主流になったが、茶道などの需要により、製法もしっかりと伝えられていた。そして最近になり、「抹茶アイス」や「抹茶ラテ」など、人々の食生活にあらたなメニューが加わることになった。抹茶の伝統が絶えた中国では、生み出されることのなかった商品と言える。

 「職人芸」の分野でも、新幹線の車両づくりに高度な打ち出し板金の技術が用いられるなど、最先端の製品を作る際に、「社会のどこかで長年にわたり伝えられていた技術」が改めて脚光を浴びる場合が珍しくない。「いったん確立された伝統はとにかく残す」傾向の強い日本は、「製品や商品を“進化”させる上で、使えるDNAの多い社会」と評することもできる。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)