三菱電機(本社・東京都千代田区)オムロン ヘルスケア(本社・京都府向日市)は26日、東京都内で「保湿と快眠セミナー」を開催した。両者が技術協力した「パーソナル保湿機」を紹介した上で、杏林大学付属病院精神神経科の古賀良彦教授や快眠セラピスト・睡眠環境プランナーの三橋美穂氏が、睡眠の大切さや質のよい睡眠を得るために、湿度管理が大きな意味を持つことを説明した。


 古賀教授の専門は精神神経科で、このところは特に、睡眠についての研究や知識普及に力を入れている。三橋氏は寝具メーカー研究開発部長などを務めた後に独立し、現在は快眠セラピスト/睡眠環境プランナーとして活躍している。

 古賀教授は、「日本人は寝ている時間がもったいないと考えている人が多い」と指摘。教授によると、健康の基本は「早寝、早起き、3度のメシ」と、至って常識的なことを、きちんと整えることで、睡眠については「その日の内に寝る(午前0時までに寝る)」、「できれば7時間寝る」ことが大切という。

 三橋氏も、日本人にはいまだに睡眠を軽視する傾向が強いと指摘。睡眠時間は世界で韓国と1、2位を争うほど短い。「いつでもどこでも眠れるから自分は大丈夫」と思ている人がいるが、実際には睡眠不足であるだけで、体のだるさや不調を抱えている人が目立つ。

 両者とも、睡眠の質の大切さも強調した。三橋氏は、女性にとって特に気になる肌の問題について、徐波睡眠(ノンレム睡眠)をしっかりとる必要があると説明。徐波睡眠が取れていないと成長ホルモンの出が悪くなり、表皮細胞の「日々の誕生」であるターンオーバーが滞る。そのことが、肌荒れやくまの原因になるという。

 古賀教授は「質のよい睡眠」について、眠りにつくまでの条件だけが重視される傾向があると指摘。「寝てからの環境を、どこまでよくできるか」、「睡眠中の体を守ること」に気を使うべきだと述べた。

 人が睡眠している際に、影響を与える環境としては、光、音、匂い、ダストや花粉、温度、湿度などがあるが、三橋氏は「起きている時の感覚で、優先順序を判断してはいけない」と指摘。起きている時には、どうしても光や音の環境に注意が向くが、よい眠りをもたらすには湿度が非常に重要と分かってきたという。

 睡眠中の湿度は年間を通じて50%-60%が望ましいとされる。三橋氏によると、湿度が高すぎると、寝具の保温力を損ねてしまう場合があるので注意が必要だ。

 対談中、古賀教授はなんども「睡眠を大切にしてほしい」と強調。不眠状態が続くと、健康を損ねてしまう。そうなると回復は容易でない。そのためにも、「寝ている間のことを大切に」してほしいと言う。

 また、睡眠と「心の健康」も大きくかかわっている。古賀教授によると「ほぼすべての精神疾患が不眠と関係していると言ってよい」ほどという。代表的な例のひとつに「うつ」があるが、どちらが原因と言えるものではなく、「うつになったので不眠になる」、「不眠が精神状態を悪化させる」と、相互にリスクを高め合う側面があるという。

 三橋氏は、眠っている時には意識がないので、眠りの環境について「まあ、いいや」と考えるのは間違っていると述べた。「意識がないからこそ気を配ってほしい」、「眠りとは、明日の自分をつくる行為と分かってほしい」と訴えた。

 パーソナル保湿機については、三菱電機がハード面の開発を、オムロン ヘルスケアが睡眠と健康のソフト面を担当した。学術的にはすでに、湿度と睡眠には因果関係があると言われてきた。そこで2013年冬に、モニター23人を対象に、「睡眠における加湿効果検証」を行った。全体の8割以上の19人で「入眠潜時(覚醒から眠りに就くまでの時間)」、「ぐっすり睡眠時間」いずれかまたは両方が改善した。

 一方で、既存の加湿器に問題を感じる消費者が多いことも分かった。アンケート調査では加湿器に対するイメージとして「フィルター交換などば面倒」(83.3%)、「カビの原因になりそう」(78.2%)、「結露が出る」(76.9%)、「場所を取る」(64.8%)、「運転時の音がうるさい」(53.0%)といった指摘状況だった。

 「結露」や「カビ」さらに「手間」などの指摘を受けての「発想の転換」は、「そもそも、部屋全体に湿り気を与える必要があるのか」だった。結論は「睡眠中に外気に露出される顔の周辺に、必要かつ十分な湿り気を与えればよい」だった。考え方を「部屋全体の加湿」から「人を保湿する」に切り替えた。

 また、スチーム式の加湿器の場合、布団で寝ていると顔周辺の空気の湿度が高まるのは、スイッチを入れてから45分程度かかることが、実験で確認された。このことからも、従来型の加湿器は「すばやくよい睡眠」を得るには、必ずしも向いていないことが分かった。

 スチーム式を採用したのは、震動で水滴を作って飛ばす超音波式の場合、水の中に細菌などがあった場合、湿り気と同時に細菌が放出されてしまうという、衛生面の問題があったからだ。

 スチーム式の場合には、電力消費が大きくなるという問題があるが、間欠運転で、電気代を従来タイプの5分の1に抑えることができた。高温で発生させた蒸気を室内の空気と混ぜることで摂氏45度で放出。「パーソナル保湿機」を置く場所は、顔から75センチメートルの場所を標準としている。そのため、使用時には「ほんのりと暖かい蒸気を感じる」と、「つかって気持ち保湿機」を作り出すことができた。やけどの心配もない。

 また、使用する水が少ないことから、1リットル入りの、従来品よりもかなり小さなタンクに水を入れておけば、翌朝まで安定して蒸気を出してくれるという。保湿機自体も小型で、設置場所はA4サイズのノートの半分ほどだ。

 三菱電機関係者によると、利用者としてはまず「肌の状態」に敏感な女性層が考えられるが、「寒くて乾燥している時期の健康維持が極めて重要になる受験生」、「睡眠時の空気の乾燥が、呼吸器のトラブルにつながりやすい高齢層」など、さまざまなケースが考えられるという。

 三菱電機とオムロン ヘルスケアは「パーソナル保湿機」について、単なる技術交流にとどまらず、睡眠と保湿の重要性を両社で進めていくことにした。保湿機も、三菱電機とオムロン ヘルスケアの各ブランドで売ることにした。今後も共同でマーケティング活動や、睡眠に対しての保湿の有用性についての実験、提案などを行っていく考えだ。

 企業2社がこのように「自社が得意な分野」をもちより、特定商品について共同で展開していく例は、極めて珍しい。両者関係者によると「もしかしたら、初めての事例かもしれない」という。(写真は睡眠そのものと、「寝ている間の環境」の大切さを説明する古賀良彦教授と三橋美穂氏、サーチナ編集部撮影)(編集担当:中山基夫)