英領バージン諸島を拠点とするSREミネラルズ社によれば、北朝鮮の平壌(ピョンヤン)市の北西方向にあする鉱床に推定2億1600万トンのレアアース(希土類)が埋蔵されている可能性がある。仮に事実ならば、北朝鮮が世界のレアアース市場のリーダーとなる可能性がある。レアアース産出における中国の地位を揺るがすだけでなく、北朝鮮と鉱産物輸入国である日本や韓国との関係改善にもつながるという見方もある。

 北朝鮮の「地下に眠る」とされるレアアースの2億1600万トンは、中国における埋蔵量の6倍に相当する量だ。

 レアアースは自動車、電子機器、ハイテク機器など工業分野において不可欠な材料だ。スカンジウム、イットリウム、ランタン、ルテチウムなど計17種の希少金属の総称で、近年はその利用価値に注目が集まっている。

 世界のレアアース生産の95%を占める中国のレアアース埋蔵量が急速に減る中、北朝鮮は2月中旬に中国とレアアース開発に関する資源開発協定を締結した。

 一方、韓国鉱物資源公社の元幹部が2013年8月に韓国有力紙に寄稿し、「北朝鮮が主張する10億トンのレアアース埋蔵量のうち産業的に意味を持つ量は約4800万トン」と指摘した。これは中国の8900万トンに次いで世界2位で、ロシア(2100万トン)、米国(1400万トン)の両大国を凌(しの)ぐ。

 この膨大な量については懐疑的な意見もある。韓国の北韓研究所チョイ・クンソウ所長は「それほどの量はない」と発言。米国地質調査所は「コメントするには不十分な情報量」と発表した。

 2012年、中国の輸出規制のためにレアアースの価格が跳ね上がった。これに反発して日本や米国、欧州連合が世界貿易機関(WTO)に提訴。WTOの関係機関は大筋で日米欧の主張を認める中間報告を2013年10月に通知した。また、中国の輸出規制をきっかけに、各国は代替資源の開発と模索を進めることになった。

 中朝貿易の状況で言えば、2014年1-6月の北朝鮮から中国への輸出額は前年同期比で3.9%減少の13億1000万ドルだった。輸入額は同0.6%減少の15億8000万ドルだった。

 同期における北朝鮮の対中貿易収支は2億7000万ドルの赤字で、前年同期の2億3000万ドルよりも4000万ドル増加した。

 北京の北朝鮮消息筋によると、北朝鮮の対中輸出では、無煙炭と鉄鉱石の輸出が減少する代わりに、マグネサイト、銅鉱石、レアアースが増加するなど、高価な品目の輸出が増加したという。特にレアアースは153.7%増と大幅に伸びた。

 代替資源の開発などが進んでいるとはいえ、それまで頼り切っていた中国の輸出規制という「非常事態」の記憶が生々しいだけに、日本も韓国もレアアースの供給元は多く確保しておきたいところだ。北朝鮮にとって、西側諸国へのレアアース輸出の道が開ければ、外貨獲得の貴重な手段となるだろう。

 少なくともレアアースを巡る経済面において、日韓と北朝鮮の利害は一致している。そのため、北朝鮮のレアアース資源が日本や韓国との関係改善にもつながるという見方も出はじめている。(執筆:宮田敦司/編集:如月隼人)


【プロフィール】
宮田 敦司(みやた・あつし)
1969年生。日本大学大学院総合社会情報研究科博士後期課程修了。航空自衛隊資料隊にて13年間にわたり資料収集及び翻訳に従事。退職後、ジャーナリスト、フリーランス翻訳者。著書に『中国の海洋戦略』(批評社)ほか。